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第四話:湿り気のある男

 俺がギルドを出ると、日が傾きかけていた。


 夕日が俺の濡れたテラコッタ色の髪に反射していた。


「そろそろ体を休めるか」


 俺は川縁で胡坐をかいて座った。


 やはり川沿いは安らぐ。適度な湿気こそが甲殻類にとって最も大切なことだ。


 《いや、乾かしなさいよ。なんでずっと湿ってるの!》

 

 俺は肺の中の空気を入れ替えるように、深く、湿った息を吐き出した。


 エラ呼吸が出来れば、効率よく酸素を取り込めるのだがな……不便な体だ。


《そりゃ人間ですからね!》


 ザワザワ。


 俺が川縁で瞑想していると、徐々に周りが騒がしくなってきた。


「ねえ、あの方はどこの騎士様かしら」


「あの落ち着き、聖人様かもしれないわ」


「それにしてもあの煌めく髪なんて奇麗なのかしら」


「もしかして水の妖精か何かだったりして!」


 瞑想する俺の周りには人だかりが出来ていた。


「目を開いたわ!」


「いま私に目線をくれた気がする!」


「違うわ!あれは世を憂いてる眼差しよ!」


 これではゆったり休むこともできんな。


 俺は立ち上がり次の川縁に向かおうとした。


「こっちに来るわ!ああ、なんて美しいの!」


 ドカドカドカ。


 向こう側から大股でドラミナが近づいてくる。


「テッペイ!ダメなのじゃー!!」


 ドゴォ!


 唐突なドラミナの体当たりによって俺は川の対岸に叩きつけられ、深くめり込んだ。


「キャー!!人殺し!」


 対岸ではドラミナの行為に集まっていた人たちの悲鳴が上がっていた。


「テ、テッペイなら大丈夫じゃ!世界一頑丈なのじゃ。だ、だいじょうぶじゃな?ううぅ」


 ドラミナは一っ跳びして、対岸のテッペイの様子を恐る恐るうかがう。


「なあテッペイ、生きとるじゃろ?」


 土煙が晴れるとそこにはめり込みながらも無傷のテッペイの顔が見えた。


 「問題ないが、めり込んで動けん」


「い、今出してやるからな!任せるのじゃ!」


 ドラミナは力強く俺の腕をつかみ引っぱった。


 ブチィ!


 俺の腕は取れた。


「テ、テッペイ、う、腕がもげたのじゃー!」


 ドラミナはパニックになっていた。


「負荷がかかりすぎたようだな。どうせ生えてくるから気にするな」


 俺は残った四肢で何とかめり込みからでるとおもむろに腕を再生させた。


 ズルッ!


 何事もなかったかのように元通りの腕がそこには付いていた。


《出来るようにしといてなんだけど、実際やられるととんでもない絵面ね……》


「テッペイすごいのじゃ!いらない腕は燃やしておくのじゃ!」


「置き去りでも構わんがな」


《置き去りだと街の人が驚くでしょ!》


 手際よくドラミナは自切した腕を炭にする。


「それで、お前に突き飛ばされて俺の外骨格のほとんどが砕けてしまったわけだが」


「す、すまないのじゃ!べ、弁償するから許してほしいのじゃ!」


「いや、別にいい。どうせ既製品ではお前のパワーに耐えられそうにないからな」


「それじゃあ、どうすればいいのじゃ……」


「この世の頑丈な素材を探しに行くに決まっているだろう、お前には色々案内してもらうぞ」


「わ、わかったのじゃ、妾の知識を総動員してテッペイの鎧の材料を探すのを手伝うのじゃ!」


「その前に栄養補給をしたい。再生にはエネルギーがいるからな」


「そ、それならオススメの串焼き屋台があるのじゃ!安くてうまいのじゃ!」


「そうか、案内してくれ。街のことはまだ詳しくないからな」


《いやいや、あなた今半裸だから!その格好で屋台に行くの!?》


 ドラミナと二人で川を飛び越え、屋台のある通りまで移動した。


 移動中やたらとキャーキャー言う声が聞こえたが、ドラミナが炎を吐きながら威嚇していたからだろう。


「ドラミナ、炎は乾燥するからあまり俺の周りで吐くな」


「でも、今のテッペイはやたらと人だかりを作るから適時どけないとだめなのじゃ」


「フム、通行の為か、炎以外を使え」


「わ、わかったのじゃ」


 ドラミナは尻尾をビタンビタンさせながら威嚇することにしたようだ。


「テッペイ!ここなのじゃー」


 そこには立派な赤ちょうちんを吊るした屋台が立っていた。


「おう!ドラミナじゃねえか!今日はちゃんと金持ってるだろうな!サービスは1本までだぞ!」


 ずいぶん気前のよさそうな店主が勢い良く応対する。


「だ、大丈夫じゃ!400ゴルドあるから20本は食べれるのじゃ」


「そうか、それと妙に艶めかしいお連れさんがいるな」


「テッペイだ。先ほど腕を生やしたばかりなので、たんぱく質が豊富な肉をくれ」


「腕?何を言ってるかわかんねえがうちの串焼きはボリュームたっぷりだぜ!」


 そういうと店主は脂が滴る大ぶりの串焼きを一本差し出した。


「うちは何喰っても一本20ゴルドだぜ!」


「そうか」


 俺は串の根元を二本の指でつまみ肉をスライドさせて口に放り込む。


「しっかりした肉質だ。3000ゴルド分頼む」


「へい!って150本も食べるのかい兄ちゃん。それともドラミナの分もかい?」


「なぜ俺がドラミナの分まで注文するんだ?」


「あ、そ、そうかいちょっと焼くのに時間かかるから待ってくれよな」


「店主。妾の分はまだなのじゃ?」


「もう20本食べたのか?金がないなら追加はなしだぞ!」


「1本はサービスしてくれるって言ってたのじゃ!」


「今日は普通に払ったからサービスなしに決まってるだろ!」


 ドラミナは店主の言葉を聞くとしょんぼりしてしまった。


 しばらくして次々と串焼きが積まれていくが、俺は黙々と串から肉をスライドさせ口に放り込んでいった。


《その食べ方すごく指が汚れると思うんだけど……》


「テ、テッペイ少し分けてほしいのじゃ」


「なぜだ?」


「た、食べたりないのじゃ」


「スライムの体液集めの労働代くらいは払ってもいいか」


 俺は20本ほどドラミナに串焼きを分けてやった。


「ありがとうなのじゃー!」


 ドラミナは満面の笑みで串焼きをほおばっていった。


「店主、いいエネルギー補給になった」


「おう、満腹になってくれてよかったぜ!しょっちゅう来られると材料が間に合わなくなっちまうからあれだけど、また来てくれよな!」


「ああ、覚えておこう」


 俺は効率的にエネルギー補給が出来たことに満足し屋台を後にした。


 「満腹なのじゃ~」


 ドラミナは腹をさすりながら満足そうだった。


「テッペイ今日はもう休むのじゃ?」


「いや、まだ閉まってないなら、防具屋を訪ねようと思う」


「鎧の相談じゃな!どんなのにするんじゃ?」


「そうだな、頑丈さは当然として、腐食耐性は欲しいな」


「じゃあ手ごろなとこだとミスリル銀がいいのじゃ!」


「ほお、異世界で定番のあれか」


「加工もしやすいから、きっと防具屋もいい感じに作ってくれるのじゃ!」


 ドラミナを連れ鋼鉄の鎧を買った防具屋に来た。


「いらっしゃい、あれ朝に鎧を買ってった腰布の兄ちゃんじゃねえか。上半身の鎧はどうした」


「スライムとドラミナに破壊された。強度と腐食耐性が足りん」


「鋼鉄が腐食するレベルってどんなスライムと戦ったんだよ……ドラミナの方はまあわからんでもないが、それで

 新しい鎧を買いに来たわけか」


「そうだ、俺にとって外骨格がないのは耐えられんからな。前と同じ全身鎧で、素材はミスリル銀。

 ハサミの形のガントレットを付けてくれ、魔力で念じたら挟める機能付きで頼む」


「いやいやちょっと待て、ここは防具屋であって魔導具屋じゃねえ。そもそもミスリル銀の全身鎧作るほど在庫がねえ、とんでもない値段になるぞ」


「金は依頼で貯めるから問題ない」


「ま、まあそれならいいけどよ、でもうちじゃ作れねえ、魔導技師か錬金術師のとこに行ってくれ」


「ドラミナ。当てはあるか?」


「錬金術師も魔導技師の知り合いもおらんのじゃ……」


「防具屋は誰か知らないか?」


「知ってるっちゃ知ってるが、あまりお勧めできんぞ」


「何故だ?」


「腕前はピカ一なんだがな……毒妖精なんだ」


「なんだそんなことか。案内図を書いてくれ」


「どうなっても知らねえぞ、それから気難しいから今から突撃するなよ、死にたくなければな……」


「了解した」


 俺は案内図を貰うと、川縁で夜を明かしてから毒妖精の下へ向かうことにした。


「テッペイ、野宿は体に堪えるのじゃ~」


「別にお前は宿に行けばいい」


「お金がないのじゃ……」


「……」


《なんてひもじい二人組なの……》

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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