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零士が学園に入ってからというもの、日常は一変した。


 入学して間もない日のこと。

 零士は自動販売機のジュースが売り切れていた事に腹を立て、自動販売機を何度も蹴っていた。

 

 その時零士の後ろで声がした。

 「お前! 何しとんねん」

 そこには高校三年の牧田(まきた)がいた。牧田は身長195センチあり、体重は100キロ、柔道の

 地区大会では無敗を誇っている。

 全国の大学や実業団から声がかかっている。

 上の指示で止められているが。


 「神原(かんばら)、お前、特別かなんか知らんけど やりたい放題やの」


 零士は振り返り、その大男を睨み返した。

 「ああ? シメんぞ雑魚が」

 そうしてまた一段と強く自動販売機に蹴りを入れた。すでに自販機はスクラップのようにボコボコだった。


 その瞬間、零士の上に巨大な影が落ちた。

 一瞬で零士の首に大木(たいぼく)の様な神原の腕が巻き付いていた。零士の顔は半分埋まっている。


 「締め落としたる。お前に腹立ってるん俺だけちゃうんや」

 牧田は零士の耳元で囁いた。


 そこに2人3人と生徒が集まり出す。

 「何してんの? 牧田君、零士君死んでしまう!」

 「ちょっと先生呼んで来る!」

 一人の女子生徒が慌てて廊下を駆けて行った。


 零士は心の中でため息をついた。

 (雑魚が)

 

 零士は首に巻き付いた牧田の二の腕をつかみ、力を込めた。

 「!?…こいつ……」

 次第に牧田の表情が苦悶の表情に変わっていく。

 その瞬間、ブチっと音がした。

 見ると零士の五指が牧田の二の腕に刺さっていた。


 「ぎゃあああ!」

 牧田の叫び声が廊下にこだまする。


 「おい! 何してる!」


 止めに来た教師が2人を引きはがしにかかる

 その教師の顔面に零士の蹴りがヒットした。

 訓練を積んだ大人でさえよろめき、床に崩れる。

 その光景に、生徒たちは誰一人声を上げられなかった。


 「……なんやコイツ」

 様子を見ていた大河が目を輝かせる。

 だが大半の子供たちは、息を殺して零士の背中を見つめていた。


 それからも問題は絶えなかった。

 授業をサボり、訓練を妨害し、気に入らない教師の机を蹴り壊す。

 机の破片を前にして教師が歯噛みするが、本気で零士を抑えようとする者はいなかった。


 ――上からの指令があったのだ。

 「零士を傷つけるな」

 特殊な因子を持つ存在だから。国家の財産だから。


 その結果、学園は一人の少年に振り回されることとなった。


 ただ一つ、不可解なことがあった。

 零士は、蓮の前でだけ荒れなかったのだ。


 ある日、殴り合いで血まみれになった零士が、廊下の隅で膝を抱えていた。

 蓮がそっと近づくと、ふいに零士が呟いた。

 「……お前のオーラは見えねえ。」

 「え?」

 「皆は色がついてる。敵意、嫌悪、下心……全部見える。鬱陶しくて仕方ねぇ。でも、お前は何もない。真っ黒だ」

 零士はニッと笑った。だが目は虎のままだった。

 蓮は意味が分からず戸惑ったが、心のどこかで「この人は嘘をついてない」と直感した。


 半年後。

 零士は忽然と姿を消した。


 「……脱走や」

 高瀬が頭を抱えながら現場を確認していた。

 窓枠が壊され、足跡は校門の外へ続いている。

 「まったく、あの野良犬め……」


 それから時折、街で「暴れている」「ヤクザ組織を潰した」とかという噂だけが流れてきた。

 そのたびに高瀬は舌打ちし、また現場へと出かけていった。


 嵐のように現れ、嵐のように去っていった零士。

 だが蓮の中には、あの日の言葉が焼きついていた。

 「お前のオーラは見えねえ」


 それが何を意味するのか、蓮自身もまだ理解できなかった。

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