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男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される  作者: 新城かいり


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男装聖女と魔女の家 1


 彼女をこんなに間近で見るのは初めてだが、その金髪とこちらを見下ろす綺麗な青い瞳を見て昔施設にあった人形を思い出した。

 そんな作り物のように美しい彼女だが、今の私にとっては“敵”に他ならない。


「……っ!」


 急いで起き上がり、そこで私は自分がベッドに寝かされていることに気がついた。

 しかもご丁寧に毛布まで掛けられていて驚く。


(なに、どういうこと? ここは……?)


 その部屋は多くの植物に囲まれ、色んなハーブが混ざった、あのサシェのような香りがした。

 ベッド横の窓の外は暗い。やはりまだ夜のようだ。

 部屋の数ヶ所に置かれた蝋燭の灯りでフェリーツィアと先ほどの青年の顔がオレンジ色に揺らめいている。

 状況はよくわからないが、彼女たちを睨みつつ私は今一番気になっていることを訊いた。


「みんなはどこだ」


 口から出たその声を聞き、自分が藤花の姿のままなことに気づく。


(そうだ。あのときいきなり意識が遠のいたから……)


「ほら~、めっちゃ警戒されてんじゃん」


 先ほど私を覗き込んでいた同い年くらいのおかっぱ頭の青年がこちらを無遠慮に指差した。


「うるさい。あんたはちょっと黙ってて」


 そんな彼に向かってきつく言ったのはフェリーツィアだ。


(全然キャラが違うじゃないか!)


 ドレスが汚れてしまったと可愛らしく叫んでいた彼女を思い出し、私は呆れた。

 きっとこちらが地なのだろう。

 やはり彼女は私たちを騙すためにずっと猫を被っていたのだ。


 ぎりと拳を握っていると、彼女は私に視線を戻し緊張したような顔で言った。


「まず、手荒なことをしてごめんなさい」

「まずはこっちの質問に答えろ。仲間と馬はどこだ。無事なんだろうな」


 すると、彼女は目を大きくしたあとでふぅと息を吐き頷いた。


「大丈夫。馬もあなたの仲間もちょっと眠ってもらっただけ。今頃森の中で目を覚ましてるんじゃないかしら」

「本当だな?」

「ホントホント」


 そうコクコクと頷き同意したのは青年の方だ。

 それを聞いて少しだけホッとするが、完全に信じられるわけもなく警戒は解かずに私は続けて質問する。


「ここはどこだ」

「ここは私の(うち)


 ここがフェリーツィアの家?

 ということは、ここは魔女の家……?


(確かにすごく魔女の家っぽいけど……)


 部屋中の緑もそうだが、中央のテーブルの上には何に使うのかよくわからない怪しげな小物がたくさん乗っていた。


 しかし、ならこの青年は一体なんなのだろう。

 髪は長いけれど、体格や声からして男に間違いない。


(魔女だけが住む森だと思っていたけど、男も普通にいるってことか……?)


「あなた、聖女よね?」


 いきなり訊かれてギクリとする。


 ……そういえばさっきも「間違いない、聖女だ」という声を聞いた。


 答えずにじっと睨み上げていると、彼女は続けた。


「だってあなたさっきまで間違いなく男だったもの。あれは変装なんてものじゃなかった。変身よ。そんな奇跡の魔法が使えるのは伝説の聖女くらいだわ」

「……」

「トーラ、だったかしら。あのラディスのお気に入りだって言われてた見習いくん」

「っ!」


 フェリーツィアにまで知られていたのかと羞恥で舌打ちしたくなった。


「てっきりあの男がそういう趣味だからこの私に靡かないのだと思っていたけど」

「うっわ出たよ。自信家発言」

「うるさい、黙ってて!」


 青年が入れた小さなツッコミにすかさず怒鳴ってからフェリーツィアは続けた。


「あなたが聖女だから。そのことを知っていたからラディスは最初から私が偽者だと気付いていたんだ」


 核心を突くように言われ、私は嫌な汗が出るのを感じた。


 どうする……?

 ここで聖女だと認めてしまって良いのだろうか。


(危害を加えられるわけじゃないみたいだけど……)


 ベッドに寝かされ毛布まで掛けてくれたのだ。

 しかも彼女たちの私を見る目に敵意は全く感じられない。

 それどころか先ほどからその眼差しには期待のようなものを感じる。


「ねぇ、そうなんでしょう?」


 もう一度問われて、私はゆっくりと口を開く。


「……だったら、なんだってんだよ」


 すると彼女はベッドに両手を着いてこちらに身を乗り出した。


「私は、いえ、私たちはあなたを探していたの。ずっと!」

「は?」


 そういえば気を失う直前、彼女に「見つけた」と言われたことを思い出す。


(……どういうことだ?)


 私を探していた?

 ずっと?


 謎だった魔女フェリーツィアの目的。

 それが、私なのだとしたら。


(ちょっと、待ってくれ……)


 最悪な答えが頭を過り、私はゆっくりとそれを口にしていく。


「まさか、そのために騎士団を狙ったのか……?」




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