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男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される  作者: 新城かいり


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男装聖女と魔女 2


 まず元の女の姿に戻る。

 キアノス副長の前だが、深く眠っているようだし今はそんなことを気にしている場合ではない。


 他人の身体を治したことはまだないけれど、きっとラディスと空を飛ぶのと同じ要領で身体のどこかに触れていれば行ける気がした。


「っ!」

 

 キアノス副長の手に触れて、その冷たさに驚く。


(呪い)


 その言葉を心の中で反芻してぞくりとした。

 これが本当にあの彼女がかけた「呪い」なのだとしたら、なんて恐ろしい力だろう。

 ラディスが前に魔女は忌避される存在だと言っていた意味がわかった気がした。


 ……私に治せるだろうか。


 知らず、ごくりと喉が鳴っていた。


(でも、やってみるしかない……!)


 ラディスが見守る中、私は深呼吸ひとつして目を瞑った。


( 呪いよ、消えろ )


 いつものように、でもいつもよりも強く念じる。

 すると、頭の中にぼんやりとイメージが浮かんできた。

 キアノス副長の身体に、何かドス黒い煙のようなものが幾重にも巻きついているのが見える。

 きっとこれが呪いの正体。これを取り除けば、きっと副長は助かるはずだ。

 いつの間にか淡く輝いていた自分の手でその煙に触れる。――と、ぶわっと触れた部分を中心にしてその黒いものが放射状に散って消えていった。


「うっ」


 そのとき、キアノス副長の小さな呻き声が聞こえた。

 目を開けると彼の身体が淡く輝き出していて、私は確信する。


(よし、行ける!)


 もう一度かたく目を閉じ、同じようにイメージの中で副長に巻きついている禍々しい黒煙を次々消していく。


( 消えろ! )


 そして、全ての煙がキアノス副長の周囲から消え去ったのを確認して、私はゆっくりと目を開けた。


 キアノス副長の身体から先ほどの輝きが消えていた。

 でも、その顔には生気が戻っていた。あんなに冷たかった手も今は温かい。

 元の凛々しく美しいキアノス副長に戻っていて私はホッと息を吐いた。


 きっとこれでもう大丈夫のはずだ。


「凄い……」


 そんな感嘆の呟きが聞こえて、私は傍らを振り向きにっと笑う。


「なんとかなったみたいだな」

「あ、あぁ。ありがとう」


 驚きと安堵が織り交ざったような顔をしたラディスに感謝され嬉しくなった。

 ――しかし。


「……あ、あれ?」

「おいっ!?」


 ベッドから離れようとして、ふらりと急に貧血を起こしたように目の前が真っ暗になり危うく倒れそうになったところをラディスに支えられた。


「大丈夫か?」

「……う、うん」


 頭を振って何度か瞬きをすると視界がちゃんと戻ってきた。

 自分でも驚いた。

 他人の身体を治すのは、もしかしたら結構力を消耗するものなのかもしれない。それとも。


「呪いを打ち消したんだ。相当な力を使ったんだろう。少し横になるか?」


 心配そうなラディスに私は笑いかける。


「いや、大丈夫……」


 そう言いながら自力で立とうとして、しかしやっぱり足元が少しふらついてしまった。――と。


「うわっ!?」


 いきなりラディスに抱えられてびっくりする。

 一気に顔の熱が上がって、こんなときにやめてくれと思ったがラディスは怒ったような、いや、とても不安そうな顔をしていて何も言えなかった。

 そのまま彼は私を運びソファに寝かせてくれた。


「とにかく少し休め」

「わかった……」


 責任を感じているラディスを見てなんとかしたいと思ったのに、今度は私が心配をかけてしまった。


(情けない……)


 せめて平気だというところを見せたくて、私は笑顔で話しかける。


「でも、副長が治って本当に良かったよ」

「ああ。お前がいてくれて本当に助かった。……しかし、すまなかったな」

「え?」

「緊急事態とは言え、皆の前で……」

「あ、ああ」


 ……そうだ。皆の前で声を掛けられたことを思い出してしまった。

 食堂にはあのチンピラ風な奴らもいたかもしれないのに。


(イリアスもめちゃくちゃ驚いてたな……)


 ぽかんとした友人の顔を思い浮かべながら私は苦笑する。


「ま、まぁ、いつもみたいになんか適当言って誤魔化すよ」

「もしまた何かあったらすぐに俺に言え」

「わかった。……そういえば、あの子、フェリーツィアは今どこに?」


 副長に呪いを掛けた張本人かもしれない彼女のことが気になった。

 するとラディスはスっと目を細めた。


「おそらく今頃は自室でほくそ笑んでいるのではないか?」

「……これから、どうするんだ?」


「ラディス?」


 そのときキアノス副長の声が聞こえて私は慌てた。まだ元の姿のままだ。

 私は副長からは死角になるようになるべくソファに低く身を沈めた。

 ラディスがそんな私を見てからベッドの方へと戻った。


「調子はどうだ?」

「私は、一体……?」


 キアノス副長は、状況がわかっていないようだった。


「お前、急に倒れたんだぞ」

「私が?」

「覚えていないのか?」

「ああ……すまない。そうか、心配をかけてしまったみたいだね」

「皆の前でだったからな。皆心配している。明日、平気そうなら元気な姿を見せてやるといい」

「うん。そうするよ。……最近、どうも調子が悪いと思っていたんだけどね」


 そう苦笑したあとで、キアノス副長は続けた。


「ところでラディス。そこにいる女性は誰かな?」


 心臓が飛び出るかと思った。




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