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初陣⑧


 どんな発動条件なんですか! そんなにやらしい能力だったの〜!? 絶対に無理ですよ! もしかしてシスターのも触ったってこと〜!? と2人は息ぴったりに詰めてくる。


「ああもうそういうことなの! 俺だって好きで選んだわけじゃないから! 覚醒したと思ったらこういう能力だったんだ! 仕方ないだろ!?」


 なんなんだよこの俺が悪いみたいな流れはさ!


 一気に居心地が悪くなる。

 とにかく流れを変えないと。


「でもこれでわかっただろ? そんな簡単にブラジャーなんか出せないんだって」


 見上げながらコレットに言うと彼女は困った顔をする。


「こ~りゃまたとんでもない発動条件だね〜」

 

「コレット様、一旦やめませんか? これは必要なことと言ってましたが、やっぱり服を脱いでまでは、その……心の準備が……」

「そーだよね~気持ちはすごくわかるよ~? でもね~……」


 コレットは両手を組んで考え事を始める。


「でもね~事は一刻を争うんだよね~。……うん! ルルちゃ~ん!」

「な、なんですか?」

 

 とても不安そうな声だった。

 確かに、俺も何かとんでもないことをこいつは言うのだろうと思った。

 

 最初こそコレットは心配してそうな雰囲気だったのに、うん! と答えたタイミングでは、もうすでにいつもの明るい調子に戻っていたのだ。

 

「ここは村のために強くなると思って~耐えてみない~? ほんっっっとに! 強くなるからさあ~!? ね〜いいでしょ〜?」とルルリィに優しく抱きつく。

 

「ええええええええええ!?」


 やっぱり不安的中だよおお! とばかりにルルリィは叫ぶ。

 

「で、でも……! その……! 私……」


 ルルリィは一滴の汗を流しながらスカートを強く握りしめる。


 コレットはルルリィの耳元まで顔を寄せ、俺にもギリ聞こえるくらいのボリュームで「私はルルちゃんに強くなってもらいたいな〜。だから〜お・ね・が・い〜」


 まるで悪魔の囁きみたいだった。


 ルルリィは顔をしかめる。何かを必死に考えているようだった。

 そんなに無理しなくてもいい、また機会はあるさ。というのが正直な気持ちだ。

 

 普通なら断っておしまいだ。ルルリィもまさかおっぱいを触らせるためにここにいるわけじゃない。

 

 だけどルルリィは断らない。

 ずっと何かを考え続けている。


 その間もコレットは耳元で囁き続ける。

 なんて言ってるのか聞き取れないけど、たぶん強くなろうよ〜的なことだとは思う。


 んー。

 ルルリィが否定もせず考え続けてるのは、俺が知らない何らかの事情があるのか?

 ならここは何も言わず、ただルルリィの返答を待てばいい。


 別に今触れなくてもまた機会はあるだろう。

 聖堂が取り上げられても、取り返すチャンスも一緒に探せばいい。

 無理に今おっぱいを触る必要はないんだ。

 

 さっきよりも長い沈黙が流れる。

 ごろごろと砂利道を通る馬車の音だけが響く。ゴラス高山の頂上は近い。視界は開けてピタを一望できる。あと1.2時間そこらで夕焼けだろうか。


 12月の高所ともあって、剥き出しの馬車に吹く風はひんやりとする。だけど眩しい日差しが身体を暖めてくれるおかげで身震いするほど寒くはなかった。

 そもそも赤道に近いこともあり、凍えるような寒さにはならない。


「……わかりました」とルルリィ。

「私は、コレット様を信じます」


 そりゃそうだよ。

 理由はどうあれ、こんなところで裸になれって…………え?

 

 え?

 聞き間違いか?


「おっぱいを……出せば、いいんですよね……?」

「え? ああ、えっと――」


「あ~ん! さっすがルルちゃ~ん! 大好き~!」と、コレットはルルリィを抱きしめながら身体をゆさゆさと振った。

「そ~いう素直なところをウンディーネは認めたんだね~!」


 えっと……これは……。

 俺はほっぺを掻きながら状況整理に努める。

 

 ルルリィが受け入れたってことは……。

 それって、つまり……。

 おっぱいを……触れる……!

 

 この能力の一番の課題はやっぱり相手に生身のおっぱいを触らせる説得だろう。

 よくわからないけど、その課題を俺の代わりにコレットがしてくれたらしい。

 ……助かった。

 やっとこれで俺は強くなれる!


 

 ルルリィはコレットが離れると、着ている軍服の上から1つ1つボタンを外していく。

 全て外し終えると軍服の前が開いた。

 そして、厚みのある軍服の中からシャツのような白い服が顔を覗かせる。


「さ、触るのは認めますが、見るのは許しません。それでも、いいですか……?」


「ああ。問題ない」


 と思う。

 ブラジャーは念入りにおっぱいを触らなくちゃいけない。

 何も見る必要はないはずだ。

 ……たぶん。


「寒いから早く終わらせてあげてよ~!」

「わかってるよ」


 もちろん早く終わらせる。

 ルルリィは覚悟を持っておっぱいに触ることを許してくれた。

 それに報いるためにも早くブラジャーを出すんだ。


 俺は身体をぐっと前に寄せる。

 お互いに正座なので膝の部分があたった。


「じゃあ……触るよ?」


 ルルリィはこくりと頷く。

 いつのまにかとんがり帽子を深く被り直しており、目元が完全に帽子に隠れている。


 ごくっと息を飲む。

 ルルリィの開けた軍服をさらに開き、着ている白い服の裾に指を掛ける。


 このまま捲って手を服の中に入れる。俺がそうしようとしたところで、ふと顔をあげる。


「……おい」

「なあに!?」

「いつまで見てるつもりだ?」

「最後までだよ〜! さあ早く〜!」

「あの、見られてると気になるんだけど」


「私は気にしないよ〜!?」

「俺がだよ!」

「気にしなくていーから早く〜!!!」


 ルルリィも気にするだろうから見るなよ! とまでは言えなかった。

 その気が失せるぐらいにコレットのテンションが高かったからだ。

 目を輝かせ、両方の拳で口元を覆い、いまかいまかと待つ子どもみたいに身体をくねくねと捻っている。


 ただでさえ恥ずかしいのに、他人に見られながらおっぱいを触るってどんなプレイだよ!?


 見るなよと言っても絶対に嫌だって言い返してくるだろうなー。

 でも一応、ね。


「気が散るから見ないで――」

「嫌〜!」


 即答かよ!


 ため息を1回。

 もういい。コレットの説得は無理だ。

 早くブラジャーを出して終わらせることだけ考えよう。


 もう一度深呼吸し、俺は摘まんだままの裾を少し引っ張り上げる。

 そして、もう片方の手を服の中へと入れた。





本番よりも前準備が大事っていう価値観






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