SS3 奔走するコレット②
ピタ帝国内、地下1階の魔物研究室にて。
「わざわざありがとうございます、コレット様」
「も~。今ちょ~忙しいんだからね~? それで~パラスポアで気になることって何かな~?」
「この地図を見てください」
机に広げられた等身大よりも大きな一枚紙にはピタを中心とした地図が描かれている。ピタの北側には大きなゴラス高山があり、頂上を中心に赤色でぐるっと囲うように線が入っている。
「この赤い線はパラスポアが蒔く花粉の予想飛散範囲を示しています」
「結構な範囲だね~」
「城下町の北側と赤い線との距離が近く、このことが昨今の死傷者数に影響を及ぼしていると思うのですが、これを過去の記録と比べると1つ気になることがでてきたのです」
ハーティタイムは大きな一枚紙の角に手を置いた。すると紙と触れた手の平の間から青い光りが漏れ始め、紙面にはみるみると何色かの線が浮き出てきた。
「このパラスポアは『サンフラシア』という花に擬態していて、毎年、12月の初週から花粉を蒔き始めます。このオレンジの線は10年前、黄緑は8年前、水色は5年前、赤紫は去年の観測飛散範囲を示しています」
「なるほどね~。他の色の範囲は似たり寄ったりだけど~赤色だけかなり広がってるってわけね~」
「そうです。妖力の広がりなど原因はいくつか考えられますが、ゴラス高山に限らずピタ周辺でこれと同じような変化は今のところ確認されていません。パラスポアだけがピンポイントに変化している理由は分かっていませんが、この結果を見るに、このパラスポアには何かがあると思わざるを得ません」
「確かにそうね~。うん! わかった~! 一度皇女様に話してみるよ~!」
「よろしくお願いします」
「また気になったことがあったらいつでも『交信』してね~!」
――――――
皇室にて。
「――というわけなんですよ~! メルテンロザリに行くにもまずはみんなを戻さなきゃだし~なのでちょ~っと行ってきてもいいですか~?」
「クエストの件もパラスポアの件も任せると言ったはずだ。好きにするがよい」
「ははーっ! そうでした~! では行ってきま~す!」
「待てコレット。行く前にフロムビッチを呼んでもらえるか? 1つ聞きたいことがあるのだ」
「はいはーい!」
――――――――
執務室にて。
「念のために『青いゼリー』を持ってっと……。よ~し! それじゃ~駆けつけますかあ~!」
と、ここでコレットの持っている盆が震える。
「誰からの『交信』かな~? ……皇女様~! 追加の指令かなあ」
――――――――
コレットは勢いよく扉を開く。
「もおおおお! ど~しよ~! ど~しよ~! ど~して皇女様が出向くのよ~!?」
城の中を走るコレット。
「やっぱりあの返答書は私が処分しとくべきだったああ~! 皇女様がフロムちゃんに話があるって言ってたのは、やっぱりあの返答書を読むためだよね~!? 皇女様は挑発されたら絶対に買うタイプだからなあ〜! くうう~! あの挑発的な宣戦布告文を見られたらこうなると分かってたのにいい~! ああもう! フロムちゃんはどーして捨てておかないのよおお~! もおおお!」
皇室の扉をバンと開く。
中には誰もいなかった。
「ああ~! もう行ってるううう! どうしよう!? プランを練り直さないと!」
コレットは大階段を3段飛ばしで降りていき地下2階へと急ぐ。
「落ち着いて考えるのよ私~! 皇女様がメルテンロザリに行くとなると~ピタに誰を残すのがせーかい? 発言力がある人となればセクちゃん~? 拗ねちゃうだろうなあ~。プラちゃんにも残ってもらうかあ」
2人の衛兵が守る廊下を抜けた先に、床にでかでかと魔法陣が描かれた部屋に辿り着く。
この部屋はピタの兵士が帰還石を割ることでワープしてくる場所である。
それぞれの帰還石はこの魔法陣とリンクしており、この魔法陣にマナを流すことで、全ての帰還石の所在が分かる。
「でもそれだけじゃ足りない~。う~ん……はっ! カイトちゃんをピタに残すのはどうだろう!? んん~強さ次第ってところか~?」
コレットは手をかざして魔法陣にマナを注ぐ。
「なるほど~頂上までまだもう少しってところにいるのね~。……パラスポアも気になるし~まずはみんなを帰還させることが先決か~! 今行くからね~『ジャーンプ』!」
コレットはその場でジャンプすると、ふっと姿を消した。
本編に戻ります。
次→初陣⑥




