表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/49

初陣⑤

 


 魔物な多種多様な見た目をしていた。

 鳥や熊や狼、それから何十倍も大きいカマキリやてんとう虫といった、この辺りに生息してそうな動物や昆虫などがパラスポアの花粉によって凶暴化している。


 これじゃまるでゾンビだった。

 もしもこの花粉がピタの城下町に降り注げばどうなる? みんなゾンビになってまず間違いなく大パニックだ。


 それは絶対に食い止めなくちゃいけない。

 こんな危険な真似をするパラスポアは一刻も早く倒さなければならない!


 魔物は唸り声をあげて前から一目散に向かってくる。


 このままだとすぐに馬車と真っ向からぶつかる。果たしてその時の俺はこの剣で戦うことができるのか?


 分からない。分からないけど、それでもやらなくちゃいけない!

 剣を持つ手に力が入る。

 先頭を走る狼に注視しながらいつでも斬りかかれるようにその剣を構えた。


 バン、バンバンバン!


 銃声が鳴る。それと同時に狼の身体は急速に凍り、やがて前倒しに転がった。

 銃声の正体はバンダックの氷滴銃か。


「ちっ! 1匹仕留めるのに4発か。これでも結構なマナを練り込んでるぞ?」と、バンダックは続けて2発撃ち、後続の狼の眉間を貫いた。


 次は3匹のてんとう虫が突っ込んできた。ドッチボールサイズのその虫は瞬く間に馬車との距離を縮める。


「エンジェルリング!」と発したプラトニカの両方の人差し指には、リング状の白い輪が浮いてるようについていた。彼女の前投げの動作で2つの白い輪は飛んでいき、軽々と2匹のてんとう虫を切断した。


 残る1匹のてんとう虫が馬車の上空に到達するが、ライラの「ライトニング!」の魔法で一筋の雷がてんとう虫に落ちて倒した。


 魔物の群れは前方だけではなかった。左右の木々の茂みからも集まってきてるのが分かる。それも結構な数。


「ライラ! 君は左側を頼む! バンダックは右側を守備! ルルリィは防御に徹しろ!」

 プラトニカは白い輪を生み出しては投げてを繰り返しながら指示を出す。


 了解! という声が合わさり、ライラとバンダックは指示された方向に攻撃を始めた。


 ルルリィは杖を構える。

「ウンディーネよ、水のご加護を――私に力を貸して!」


 薄い水の膜にルルリィは包まれる。膜はそこから一気に広がると馬車全体を包む。そしてふっと水の膜は消えていった。


 羽音を鳴らしながらカマキリが急接近してきた。

 持ち前の鎌のついた腕を振るい風の衝撃波を生み出す。それは地面を引き裂きながらあっという間に馬車に届くが、水の膜が突然現れてその効果を打ち消した。

 

 ……俺もなにかしなきゃ! 

 といっても特別何かできるわけでもない。

 間合いに入った魔物をすぐに迎撃できるよう自己流に短剣を構える。

 今できるのは、これだけだった。

 

 戦闘は激しさを増してきた。

 左右から攻めてくる魔物も前方から飛びかかってくる魔物も倒しては次、倒しては次といっこうに減る気配がない。

 マナの消耗は通常の戦闘よりも疲労感が高まる。

 危惧していたその状況はすぐに表れ始めた。


 最初の変化はライラ。メイドは戦闘とは程遠く訓練もしていない。息を切らして膝をつくまで、そう時間はかからなかった。

 

 次にバンダック。彼は日中、聖堂でもマナを消費していた。それもあってか、気づけば戦闘スタイルが銃から帯刀した剣に切り替わっていた。

 マナをまとわない氷滴銃は対人には都合がよくても、魔物相手にはあまり効果が無いようだった。


 バンダックもまたライラ同様、残りのマナは少ないのだろう。息を切らし苦しそうに剣を振っていた。


「バンダック! マナの残量は!」

 白い輪を飛ばしながら背中で聞くプラトニカに「もうほとんどありません」と答えるバンダック。

 

 プラトニカはちらっとライラを見る。ライラはその場にへたり込み、杖を振る気力もなさそうだった。


「くっ! もうすぐ頂上なのに! 想定よりも魔物が多すぎる……!」

 

 左右同時に襲いくる2匹の狼に白い輪を放ち仕留めるプラトニカ。彼女を狙う鷲が爪を立てて急降下してくる。

 プラトニカは態勢を立て直して迎撃の姿勢を取るが間に合わない。


 プラトニカに鷲の爪が刺さる瞬間、水の膜が現れて爪ごと鷲を弾いた。


「プラトニカ様! 水の膜はまだ継続できますが、同時に3カ所以上攻撃されると解除されてしまいます! 2人はもう戦えません! 一度引きませんか!」

 叫ぶルルリィに、一瞬間が空いたものの、「私の判断ミスだ……撤退する! ユキリ! 今すぐ馬車を――」


 と指示を出すプラトニカの背後に突如、彼女は現れた。薄い黄色の髪に手には盆を持っている。

 

「撤退とは情けないな~! まったく世話が焼けるね~プラちゃんは~!」

「コ、コレット様!?」

「とはいっても~この魔物の数はちょっと異常だよね~。ん~仕方ないか~!」


 コレットはプラトニカの前に立つ。

 そして大きく息を吸い、大声で「爆ぜろ~~~!!!」と叫んだ。


 三方向から襲いくる魔物は身体の内側から爆発していく。

 馬車を中心に手前から爆撃機で攻撃していくようなその光景に言葉を失う。


 気づけば魔物は全て倒れており、馬車は死体の上をごとごとと揺らしながら進んでいった。


 おいおい……なんだよ今の。

 さすがにちょっと……意味が分からん……!

 




明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ