初陣④
馬車はピタを抜けてゴラス高山を登っていく。
山は既に目の前にあり、ピタの北側辺りからはもう勾配となっている。
金髪の女兵士が言うには1時間もかからずに登頂できるという。
「今回の討伐クエストの目標となる魔物はパラスポア。植物の魔物で容姿は巨大な花だ。どんな花なのかは千差万別、本物の花と瓜二つだが、見分け方法は簡単だ。とにかくでかい。見つけ次第攻撃に移る……と言いたいところだが、今回はコレット様より1点要望を受けている」
コレットからの要望ってことはトドメの話か? さすがにルルリィのブラジャーの話はコレットも黙っておくだろう。
「そこにいる君がカイトか?」と金髪の女兵士。
「はい、そうです」
みんなの視線が俺に向けられる。顔を知ってるバンダックはニヤリと笑っていた。
急に話を振ってきたが内容に予想がつくので俺に動揺はない。
「君とは初対面だな。軽く自己紹介をしておこうか。私は今回のクエストリーダーを務めるプラトニカだ。何かあれば遠慮なく頼ってくれ」
それから右回りに自己紹介が続く。
次がバンダック、その次がルルリィ。そして俺、最後にライラ。
ルルリィは小柄な感じだった。
身なりは頭に縁の広い紺のとんがり帽子、軍服の右腕には青と水色の腕章、そして手には腰ぐらいまでの丈がある木の杖を持っている。魔法使いの兵士ってところか。
「カイトはルルリィのことが好きで今日兵士になったそうだな。コレット様から、初仕事は是非とも意中の相手であるルルリィと一緒にさせてやりたいと聞いているぞ」
……なっ!?
こいつはいきなり何を言ってるんだ!?
バンダックはピューと口笛を吹く。
対面に座るルルリィは何も言わずに下を向いて顔を隠した。とんがり帽子から垂れたふわふわとした茶色い髪が風になびいた。
プラトニカはまっすぐ俺を見たままだ。
ライラはやれやれとばかりに首を振った。
そんなはずあるわけがないと分かっているのはライラだけのようだった。
「そこで重要なパラスポアとの戦闘はカイトとルルリィに任せる。他の者は彼らが戦いに集中できるよう援護を頼む。よいな?」
「了解です、プラトニカ様!」とバンダックは応えた。
ルルリィは首を縦に振り続けるも下を向いたままだった。
「だけどカイト、たとえコレット様の計らいとはいえ公私は分別するように。相手は魔物。私達は常に命を張っているということを忘れるな」と諭すように言った。
いや、いやいやいや!
そんなことは分かってるけど、別に好きじゃねえし! と叫びたかった。でも叫べなかったのは、目の前に座るルルリィが三角座りでより小さく縮こまろうとしていたからだ。今は自分の弁明をするよりもうこれ以上話を広げないほうがいい。
よくもやってくれたなあのお盆女……。なんでこんな指示を出したんだよ!?
初対面だからおっぱいを触りやすくするように少し距離を縮めとこう的な配慮か? もしそうならやり方を間違え過ぎてる! どうしてくれるんだよ! ただでさえおっぱいは触りづらいのに、これでより触りずらくなっただろうが……!
とりあえず話題を変えるんだ。じゃないとこの後が気まずい……!
「あ、あの、ルルリィさん……その、よろしくお願いします……」
俺はより丁寧な動作を心掛け、深くふかく頭を下げた。
だけど返事は無かった。
……ああ。終わった……。
シスターごめんなさい……。聖堂無くなっちゃいました……。
脳内で俺は涙を流した。
「ルルリィはパラスポアとの戦い方は知っているな?」
「はい。ちゃんと覚えています」
「よろしい。では先にカイトと布陣の確認をしておくように」
「……了解しました」
明らかにトーンダウンした返事に俺の心は更にキュッと縮こまる。
「他の者は登頂後二手に分かれる。右側を――」とプラトニカが説明を続ける中、俺はルルリィに「ど、どうやって戦います?」と尋ねてみたが、目を合わせず「好きに戦ってください……」という、馬車の音にかき消されてもおかしくない声で俺達の会話は終了した。
こんなんで俺やっていけるのかな……。魔物と戦うのなんて初めてだぞ? 聖堂の戦いもシスターの補助魔法のおかげだし今はそんな魔法もない。
というか戦いの経験なんてないのに、俺とあの子の2人だけでパラスポアと戦えるものなのか? 今からでも辞退するべきか? でもそうすると俺がトドメを刺せなくなる。それにおっぱいを触る好環境の意味合いでルルリィとの2人っきりのチャンスもなくなる。
このまま行くか辞退するか、正解はどっちだ?
「んー困った……」
「どうしたのカイト?」
「俺とあの子でパラスポアなんて魔物を倒せるのかなって思ってさ」
「それは安心してもいいよ。パラスポアならカイトでも倒せるから。だってパラスポアはただの大きな花で攻撃なんてしてこないもん」
「……へ? そうなの?」
うんと頷くライラは続けて「パラスポアが厄介な理由は他にあってね、繁殖期になるとパラスポアは周囲に花粉を巻き散らすのだけど、その花粉には興奮作用があって人でも魔物でもその花粉を吸い込んでしまうと見境なく周りを攻撃してしまうの。だから見つけ次第駆除しなきゃいけない」
「なるほど……。ちなみにパラスポアの繁殖期っていつなの? やっぱり暖かくなってから?」
「パラスポアがどんな植物に擬態してるかによるかな。もしも冬の花だとまさに今が繁殖期になるから危険度は高い。討伐クエストになるくらいだから、今が繁殖期で既に興奮状態の魔物がいるのかもしれない」
ライラからためになる話を聞いたところで御者の女が声を荒げて「前方に魔物出現! こちらに向かってきてます!」
「迎撃準備に入る! 各自武器を持て!」
ライラの予想通り興奮した魔物はいたみたいだ。それも結構な数。
それにどうやらこの馬車は頂上までノンストップらしい。
皆一様に立ち上がり武器を手に取り構える。
俺は無いよりはましという理由で、城でライラに持たされた小さめの剣を構える。ちょうどそのタイミングでプラトニカが叫んだ。
「左右にも魔物を確認した! さあ、討伐クエストの始まりだ!」
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