能力覚醒④
俺にもナイフ投げるのかよ!
くそ! 速すぎて見えない!
やばい! 避けなきゃ!
と、身体を横に反らせようとした時、胸の辺りに違和感を覚えた。
見ると、そこにはナイフが刺さっていた。
……嘘、だろ!?
「ぐっ、ごふ……」
血が喉を昇ってくる。
ダラーっと血を垂らし、俺は仰向けに倒れた。
「カイト!? ねえしっかりして!」
「シスター! 治癒魔法を! さあ早く!」
「ええ、分かったわ!」
フリスに急かされ、シスターは慌てて両手を胸の前で組む。
目をつむり、治癒魔法の準備に入った。
「ベーゼさん! ナイフは抜かないで! 抜くと失血死の恐れがあります! それからシスターの治癒魔法までカイトの意識を持たせてください!」
「わ、分かった! カイト! カイト!」とベーゼは何度も俺の名前を呼び、頬をぺちぺちと叩いた。
「ナイフは心臓を逸れてる! よかった……」
「フリス、確認をありがとう」と、シスターが目を開く。
瞳の色が藤から鮮やかな緑となったシスターは両手を前に出した。
『主が遣わす新来なる女神よ、刻下の御使いと為りて、彼の者に憑く今際の綻びを、聖なる息吹で留めたまえ――ハイトリザレクション!』
緑のオーラをまとったシスターの頭上に緑色の光が現れた。
その光はゆっくりと昇っていき、ある程度の高さで留まると輝きを強めた。
そして、その光を頂点とした円錐状に光の膜が張られた。
あったかい光だ……。シスターの治癒魔法か……。
ナイフは押し出されるようにゆっくりと抜けていき、みるみると傷口は塞がっていく。
やがてナイフの傷は完全に消え去った。
「ありがとうシスター! 治ったよ!」
「よかったわ」と、藤色の瞳に戻ったシスターは微笑んだ。
「いつ見ても便利な魔法だな」
「ですよね〜! 恩寵による魔法はマナの消費がない分、連続発動が可能! これは大いに戦果を挙げますよ~! 楽しみですねー皇女様」
「うむ」
さてと。
ここは一言いっとかないとな。
「ちょっとこれはやりすぎだろ! なんで話をするだけなのにナイフを投げられなきゃいけないんだよ!」
しかも死ぬ間際だったし!
殺す気か!?
「……コレット」
「はいはーい」と、またナイフを手渡した。
……え? ちょ、噓でしょ!?
また投げてくるのか!?
「カイト! 余計なことは言わないで皇女様に謝って!」
「ご、ごめんなさい!」とぱっと頭を下げた。
なんで俺が謝らなきゃいけないんだよ!?
この皇女、無茶苦茶すぎるだろ……!
「弱者に発言する権利はない。話したければ強くなるがいい」と、皇女は構えを解いた。
「シスターよ、他に申すことはあるか?」
「……ありません」とシスターは頭を下げた。
くそ! 俺の能力で交渉できると思ったのに。
ナイフで殺されかけただけじゃないかよ……!
「では決まりだ。シスターにはメルテンロザリへの出兵を言い渡す。迎えの馬車を用意する故、今から2時間後、正門に来るように」
ええええ!? 2時間後!? そんなすぐ行くの!?
急にナイフ投げてくるし、この皇女、やることがえげつないわ……。
「それから、シスターに帯同するメイドは何人居ても構わないが、お前はここに残れ」と、皇女は俺に指さした。
……え? 俺?
「皇女様!? それはどういう意味でしょうか……?」とシスター。
「案ずるな。戦地に子どもは連れて行けぬだろう? 戻るまで私が預かっておく」
「で、ですが皇女様……戦地に赴くのなら、私はみんなで行こうかと……」
「私が、預かっておく。よいな? シスター」
「……分かりました」
「では話は終わりだ。下がるがよい」
「はーいお話は終わりでーす! 早く出てってくださ~い!」
俺達は盆の女に急かされ、追い出されるように小走りで皇室を出た。
「皇女様と交渉だなんて、できるわけないだろ」とバンダックは鼻で笑いながら、俺達を赤の間に通した。
出発までこの部屋を使っていいとのことだが、当然休まるはずもない。
2時間後にシスターは戦地に出発してしまう。
とにかくこれからどうするかを話し合うために、俺達はヴァネッサやエマを呼ぶことにした。
フリスとベーゼはバンダックに連れられ、ヴァネッサとピーナツの引き渡しを受けるため地下の留置所に向かった。
バンダックの話だと、本来であれば数日の留置は避けられない。
だが、2時間後に発ってしまうシスターの事情を汲んでくれれば、もしかしたら出られるかもという可能性にかけたのだ。
そして、ライラは避難計画で落ち合う場所にいるエマを呼びに城を出た。
尚、ノエルは今、城を出ているとのことだった。
赤の間に残った俺はシスターから絶賛怒られ中だった。
「危険なことはしないでって約束したよね? どうして守ってくれないの?」
「ごめんなさい」
「謝れば済むと思ってるのなら大間違いよ。さっきはほんとに死ぬところだったんだから」
「ごめんなさい……」
いやまさか俺にまでナイフを投げるとは思わないし……。
「お願い、約束して。ほんとにもう危険なことはしないって。しばらくはカイトと離れ離れになるの。また何かあっても今度は助けられないのよ」
「約束するよ。ごめんなさい……」
赤いベットに腰かけたまま、俺は下を向いて謝った。
そんな俺にシスターはゆっくりと抱きしめた。
「カイトにもしものことがあったら、私はこれからどうすればいいの? 私のことを想ってくれてるのなら、そのことをしっかりと考えて行動してね……」
シスターは泣いてはいなかったけど、声の震えから悲しんでるのが分かった。
「分かったよ……ごめんね、シスター……」
俺もだんだんと申し訳ない気持ちでいっぱいになり、ゆっくりと抱きしめ返した。
そのまましばらく、俺達は抱きしめ合っていた。
「もうすぐお別れになっちゃうね」
「……寂しい?」
「寂しいに決まってるよ。シスターはいつ帰ってくるの?」
「分からない。ほんとにピタがハイマー共和国と戦争を始めるつもりなら、当分は帰ってこれないかもしれないわ」
「そんな……。ならやっぱり俺もついていきたい。……皇女様にお願いしてみようかな」
「だめよカイト。またナイフを投げられるわよ」
「投げられてもいいもん。だって俺もシスターと一緒に行きたいし。……それに、もしまた刺されても今ならシスターに治してもらえるし」
「もう、カイトったら」
「シスター……俺、離れたくないよ……」とシスターを強く抱きしめる。
「私もだよ」とシスターは俺に応えてくれた。
「……お取込み中だったー?」
え?
顔を上げると、扉の前には先程の盆の女が立っていた。
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