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襲来⑩

 

 聖堂の外には誰もいなかった。


 ベーゼはどっちに向かったんだ!?


「ねえ見て! 煙が上がってる!」とライラが指さす。


 黒煙……火か!?


 そういや聖堂でも焦げ跡や黒煙が上がったりしていた。

 メイドで火を扱えるのはエマだけ。

 ベーゼやピーナツの攻撃も火を起こす感じではなかった。


 となると、火元はあいつか!

 

「行ってみよう!」

「うん!」と、2人は声を揃えた。



 俺達は森に着いた。

 

 ……すごい! 高速で動けるっていっても、この距離を1分もかからないなんて!

 

 しかも全然疲れてない。

 予想以上に強くなってる。

 俺の力って実はものすごく強いのかもしれない……!


「こっちよ」とフリスが先導する。

「わかるのか?」

「この距離ならね。風が教えてくれるの。この先に2人いるよ!」


 フリスは風系統の魔法を扱える。

 日常生活では、風を感じて雨を予期したりする。

 それがシスターの魔法によって感覚がより研ぎ澄まされ、人の動きで生じる微量な風の変化も察知できるようになった。


「他にはいないの?」

「誰もいないわ。2人だけ」

 

 2人……?

 2人ってことはピーナツかベーゼのどっちかがいないってことだよな?

 ピーナツがやられた後なのか、まだベーゼが着いてないのか、どっちだ……?


「風の動きが尋常じゃないわ! たぶんだけど、ベーゼさんはもう戦ってる!」

「フリス、あなたの攻撃は範囲が広すぎる。人に攻撃が当たるといけないから、絶対に攻撃しちゃだめだよ」

「わかってるよライラ。心配しないで」

「いざとなれば私が」

「待って!」と、ライラの言葉をフリスが遮る。


「フリス、どうした?」


 急に足を止めたフリスに、俺もライラもつられて止まる。

 

 そしてフリスは大声で「伏せて!!!」と叫んだ。


 シュンという風切り音が聞こえると同時に、ものすごい突風が巻き起こった。

 その場にしゃがみこんでいた俺達は、なんとか飛ばされないように芝生を掴む。


 「ぐっ! 風が強すぎる……!」


 なんなんだこの風は!?


 次第に突風は収まり、ゆっくりと顔を上げる。

 

 どういうことだよこれ……。

 目の前に広がる光景が信じられない。


 これも魔法なのか!?

 辺り一面の木という木が、全て切り倒されてる!

 

 倒れた木々が散乱して視界こそ見通せないが、近くの木々を見るに、巨大な刀で一刀両断したかの如く、全ての木が同じ高さで切断されていた。


「カイト! ライラ! 大丈夫!? 怪我してない!?」

「ああ……俺は大丈夫だ」

 

「私も大丈夫よ。いったい何が起こったの……?」

「わからない。でも、この風……この先で立ってるのは1人だけだわ」

 

「1人……じゃ、じゃあベーゼはやられたのか!?」


 ベーゼは札で戦うくノ一だ。

 こんな魔法じみた攻撃はしない。


 なら、これがあいつの本気!?

 次元が違いすぎるだろ……!


「よくわかんないけど、ここで時間を取られるわけにはいかない。2人とも行くよ!」

「そ、そうだな」


 フリスが走り、俺達も続く。


 今ので1分以上は持っていかれた。

 魔法の効果時間はもうほとんど残ってない。


「いい? もうすぐ魔法の効果が切れてしまう。バンダックさんを発見次第、即拘束よ!」

「わかった! でも、2人は拘束もできないんだよね?」


 フリスもライラも、シスターを目指してる以上、『人を攻撃してはいけない』という責務を守る必要がある。

 そして人を拘束することは、人を攻撃する意思があるとみなされるため、あいつの拘束には加担できないのだ。


 当初の予定では、ベーゼとピーナツと3人がかりであいつを拘束する予定だったが、フリスが言うには、今立ってるのは1人。

 ピーナツはそこにいなくて、恐らくベーゼも今の攻撃でやられてる。

 

 つまり、俺1人でなんとかしないといけない!

 

「ええ。だから私達は、失敗したときの切り札よ」

「切り札か……」


 フリスのいう切り札が何を指すのか分からない。

 けど、シスターの力を欲するピタ帝国や、招集に応じたノエルのことが頭をよぎり、おおよその見当はつく。

 

 ……拘束に失敗すると、2人ともシスターのもとを離れることになる。

 それは絶対に避けなければ……!

 

「見えた……! あそこに1人いるわ!」


 フリスが指さす先に、誰かが立っていた。

 

 ……失敗できない。

 シスターの魔法で俺が強化されてるとはいえ、ベーゼが倒せなかった相手を俺が捕まえられるのか?


 もしその可能性があるとすれば……それは最初の1手だけだ!



面白い! 続きが読みたい!


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