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襲来⑨


「カイト! シスターと無事に合流できたの!?」

「ベーゼ!」

 

 足音の正体は、凍った腰を押さえているベーゼだった。

 

「うん、無事に合流できたよ。でも、すぐに魔法が使える状態じゃないんだ。……それより、腰は大丈夫なのか?」

 

「問題ないわ。中まで凍ってるわけじゃないから。でもこの氷、私の札でも切れないの。魔法で固めてると思うけど、こんなに硬くなるものなの?」

「魔法の強さはどれだけ魔力を込めるかで決まるんだ。ベーゼが札で壊せないなら、相当強い魔力が込められてると思う」

「……それならちょっとまずいかも」

「まずい?」

「ピーナツがあのバンダックって兵士を外に連れ出したの。だけどたぶんピーナツでも勝てない」


 外? あの閉まった扉から出たのか。

 

 ……あれ? でも待てよ?

 ピーナツってもう魔力残ってないんじゃ……?


「シスターの補助魔法をかければ強くなれるんだよね!? だったらお願い! その魔法を私にもかけてほしい!」

「……わかった! とりあえずシスターのとこに行こう!」


 

「フリス! ライラ! シスターの様子はどう!?」

「あれ? おかえりカイト。兵士はもうやっつけたの?」

「いや、まだだよフリス」

「そう。……シスターはまだ悶えてるよ」

 

 シスターはうずくまりながら、呼吸を乱し、びくびくと震えていた。


「シスター……」


 隆起はブラジャーの着用時間に合わせて強くなる。

 もしかしたら、シスターの身体が隆起で得られるその強さに順応しようとしてるのか?


 魔法で身体を強化することはできても、それは一時的なものに過ぎない。

 ずっと効果が残るほどの力を、ぱっと身体が馴染むというのも変と言えば変か。


 まさか……毎回こうなるのか?

 隆起の説明文には、同日の重複は不可とあった。

 それはつまり、次の日に隆起を使用すれば更なるパワーアップが見込めるということだ。


 もし毎回こうなるなら、今みたいに戦闘中は避けた方がいいな。


「カイト、その方は?」

「ああ、ごめんフリス。紹介が遅れた。この人はベーゼで、みんなの救出を手伝ってもらったんだ」


「はじめましてベーゼさん。シスターのメイドをしてますフリスといいます」

「私はライラといいます。助けて頂いてありがとうございます」


 こんな時でも挨拶か!


「挨拶はこれが終わってからにしよう! とにかく、シスターはやっぱりまだ魔法が使える状態じゃない。どうしよう、他に何かいい方法はないか……」と考えていると、ベーゼが悶えるシスターの前でしゃがみ込んだ。


「あなたがシスター?」

「はい……私が、シスター……です……んんっ」と、赤くなった顔をベーゼに向ける。


「それじゃあなたが補助魔法を使えるのね。……お願い! 私に補助魔法をかけて!」と、ベーゼはシスターの両肩をぐっと掴んだ。


「あっ、ああ! ぐっうう……んんっ!」

「仲間のピーナツが危険な状況なの! 早く助けないといけないの!」

「はっあん、ああっ……! ああんっ!」


「ベーゼ! まずい! 一旦手を離して!」と、ベーゼの手をシスターから振り払うが、「あっあっ……ああああん!」と、声を出しながらシスターはびくんと大きく揺れる。


 そして仰向けに倒れた。


 しまった! ベーゼにも説明しておくべきだった!

 

「シ、シスター大丈夫……?」


 シスターの息遣いは荒く、顔は更に赤くなっていた。

 とても大丈夫そうには見えないけど、大丈夫かと聞くしかできなかった。


「えっと、その……私、何かやっちゃいました?」

「……大丈夫ですよ」と、シスターはゆっくりと起き上がり、「今も身体は熱いですが……疼きは治りました」


 呼吸は乱れたままだが、シスターは立ち上がって服装を整える。

 

「お仲間さんはピーナツさんですね……。今から補助魔法をかけますので、助けてあげてください」


 シスターは胸の前で手を重ね、祈るように手を握る。


 シスターはいつもクリスタルの入った杖を持ち歩いている。

 だけど今はあいつらに取り上げられて何もない。

 魔法の効果を高めるクリスタルがなくても、俺の力でステータスが上がってるなら……これで必ず強くなれるはずだ!

 

「神のお恵みを! オールブースト!」


 シスターの魔法により、ここにいる俺、ベーゼ、フリス、ライラ、そしてシスターが白いオーラに包まれた。


 なんだこれは……!?


 今までに何度かシスターに補助魔法をかけてもらったことはあるけど、その時とは比べものにならないぐらい強くなった実感がある!

 

「すごい……力がみなぎってきます!」

「シスター!? これは……すごいパワーが上がっています!」


 フリスもライラも同じように感じてる。

 もちろんベーゼも。


「……すごい! これが魔法の力なの!? すごく強くなってるよ私!?」


 ベーゼは札を腰の氷を当てると、氷は簡単に切り落ちた。


「うん、倒せる! これならバンダックを倒せるよ!」

「そう、ならよかった……」と、シスターは膝をつく。


 シスター!?


「大丈夫ですか!?」

「心配ないわライラ、ありがとう。少し力を使い過ぎたみたい」


 ……そうか。

 効果が強くなった分、消費するマナも多いんだ。

 俺の力でシスターが強くなっても、シスターが持つマナの量に変化は起きない。

 器となる身体に蓄えられるマナの量は、そう簡単には増えない……!

 

 「シスターありがとう! これで私がみんなを助けるからね!」と言い、ベーゼはものすごい速さで部屋を出ていった。


「待って!」

「どうしたのシスター?」


「カイトの力で私の魔法は強くなったみたいだけど、効果時間は変わらないの。3分で決着がつかなければ、効果が切れてしまってベーゼさんは負ける」

「なんだって!?」


 確かにシスターの魔法でベーゼはかなり強くなった。それはベーゼが氷を切り落としたことからも明らかだ。


 だけど、あの氷に込められた魔力があいつの最大値ではない。

 魔力をためればまだまだ強い魔法が使える。

 もし、本気のあいつをベーゼが3分で倒せなかったら……。


「助けに行ってくる!」

「待ってカイト!」

「シスター! 今行かないとベーゼが!」

「わかってるよ。カイト、フリスとライラも連れてって! ……2人とも、カイトをよろしくね!」


「はい! シスター!」と、2人は声を合わせた。



面白い! 続きが読みたい!


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