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襲来⑧


 男はさっと身を隠す。

 撃ったのはピーナツだった。


「隠れてないで出てこいよ! お前は僕が倒してやる!」


 バンバンバンバン!!!

 と、ピーナツは仁王立ちで乱射した。


「ベーゼ! 一旦下がれ!」

「ありがとうピーナツ!」

 

 ベーゼは後ずさるように香部屋に身を隠す。

 

 ピーナツが絶え間なく撃つ間、あいつは攻撃せず隠れたままだ!

 攻撃してこないのなら、今が中に入るチャンス!


 聖堂の中に入るや、俺は告解部屋がある左側の一番手前の柱まで移動する。

 俺の意図を察したのか、ピーナツも中に入りながら撃ち続けた。


 縦長の聖堂内には、左右2列、それぞれ4本の大きな柱がある。

 その柱の死角を上手く利用して、シスターのとこまで行こう!


 あいつ、柱から顔を出さない……! やっぱりピーナツが撃ち終わるまで隠れている気だ!

 それなら、まだ奥に行ける! 


 俺は2本目、3本目の柱へと進む。

 

 柱は後1つ!

 だけど、その柱の裏にはあいつがいる。


 だめだ! これ以上進むと見つかる!

 そして見つかれば恐らく……死!

 

 俺はこれ以上進めないとピーナツに合図を送る。

 するとピーナツは頷き、撃ち続けながら右側の柱に身体を寄せて前進する。

 そしてピーナツが香部屋の手前まで来ると、男は柱の左側に身体を出した。


 男はいつでも反撃できるように態勢を整えていた。

 あいつ……反撃のチャンスを狙ってる……!


 ここからどう動けばいい? と考えていると、ピーナツの一方的な銃撃が止んだ。


 ……あれ、止まった?

 顔を出すと、そこにピーナツはいなかった。


 香部屋に入ったのか。


 ピーナツは無限に撃てると言ってたけど、魔法はマナを消費する。

 つまり、銃撃が止んだということは、ピーナツのマナが切れたんだ!


「ずいぶんとまあ撃ったな。けどよ、当たらなければ意味はないぞ」と、男は銃を構えながら素早く前進、あっという間に香部屋の出入口を制圧した。


 香部屋にも告解部屋にも扉はついていない。

 香部屋の出入口に銃を向けつつ、「両手を上げて出てこい」と男は催促する。

 が、ベーゼもピーナツも応じなかった。


 ……よし、今ならいける! ピーナツのおかげであいつは今完全に香部屋に集中してる!

 今のうちにシスターのところへ!

 

 既に4本目の柱に移動していた俺は、告解部屋に入った。

 

 

 告解部屋では、シスター達は後ろ手に縛られ1か所に集められていた。


「シスター!」

「カイト!? どうしてここにいるの!?」

「助けに来たんだ!」と、俺はシスターに飛びついた。


 シスター……無事でよかった……!

 

「カイトって意外と勇気あるのね」と、明るい緑の髪を揺らしながらフリスが言った。

 

「エマはどうしてカイトを寄こしたの?」

「いろいろあったんだよ」と、シスターに抱きつきながら、黄色い髪を頭のてっぺんで括ったライラに応えた。

 

 シスターの他にはフリスとライラがいる。

 あれ、ヴァネッサがいない……?


「シスター、ヴァネッサは?」

「ピタ帝国に連れていかれたわ」

「そんな……」

「大丈夫よ、心配しないで。それより、カイトがここにいるということは、ノエルやエマも来てるの?」

「いや、まだノエルとは会ってないよ。エマは準備でピタに向かってる。……今この縄を解くから」と、後ろ手のロープに手をかける。

 

「なら、どうしてカイトがここに……? それに聖堂の騒ぎはなんなの?」

「ベーゼとピーナツが手を貸してくれたんだ。……よし、解けた」


 続けてフリスとライラの縄も解く。

 

「ベーゼ? ピーナツ?」

「後で説明するよ! それよりこのままだとあの2人がやばいんだ! シスター、俺新しい能力を覚えたんだ。これでシスターを強くできる。その後、強化された補助魔法で2人を救ってほしい!」


「よくわからないけど、わかったわ。私はどうすればいいの?」

「こっちを向いて。それから服を捲ってブラジャーを出してほしい」


 ブラジャーを出す時の発動条件が厳しめだったから、たぶんブラジャーに触らないと発動しないだろう。

 それと、『隆起』のスペルは初期のまま変えてない。

 だからあとは普通に唱えるだけで能力が発動するはずだ。


「これでいい?」

「ありがとう、じゃあいくよ! ……リュウキ!」と言い、両手でシスターのブラジャーを掴んだ。

 

 途端、眩しい光が放たれる。

 

 うお、眩しっ!

 だけどこれで成功だ!


 しばらく輝いた後、光が収まっていく。


「これでシスターは強くなったと思う! さあ早く補助魔法を……! ってシスター? 大丈夫!?」


 シスターは胸を抑え地面に伏している。

 呼吸は乱れ、とても苦しそうだ。

 

「シスター!? どうかされましたか!?」

「大丈夫ですかシスター!?」

 

 フリスもライラもシスターの体調を気遣う。

 フリスがシスターの肩に手を置くと、びくんとシスターの身体が震えた。


「大丈夫ですから!」と、ライラがシスターの背中をさすると、「はっ、ああんっ!」とシスターは声を漏らした。


「シスター!?」


 なんだ!? どういうことだ!?


「触っちゃ……触っちゃだめ……あっ……私に……ああんっ……触らないで……!」


 顔が赤いシスターは震える声で訴えた。

 シスターは胸に両腕を押し付け、悶えるように前屈みになる。

 シスターの声だけが告解部屋に響く。

 

 まさか……隆起で感じてるのか……!?

 おいおい、そんなの説明文に書いてなかったぞ!?


「はぁんっ……! カイト……これ……ううっ……どうなって、あんっ! るの……あっ!」

 

「ねえ、シスターは大丈夫なの? ちゃんと説明してよ、カイト!」とフリス。

「お、俺にもよくわからないんだ! てっきりすぐ強くなると思ってたけど……」


「ピタの人に、さっきの光が見られてたらもう来ちゃうよ!」とライラ。

「わかってる! くっそ、どうしよ……!」


 残りの兵士は1人だけだ。

 だけどあいつはかなり強い。

 シスターが動けるようになるまでここで待つか……?

 

 この部屋に武器になりそうなものはない。今あいつに来られたら……まずい!


 と、その時、足音が聞こえてくる。


 ……誰かが走ってる!

 来てるのか!? くっ、シスターは伏せたままだ……。これじゃ補助魔法は間に合わない!


 どうする?

 もし縄が解けたこの状況に出くわしたら、あいつは1人だから誰かを始末したり脅したりするかもしれない……!

 

 でも、ここで俺だけが先にでれば、子どもと侮って拘束だけで済むかもしれない。

 その後のことはわからないが、とにかく今は俺だけで見つかる方に賭ける!


「フリス! ライラ! シスターが落ち着いたら補助魔法を頼む! 俺の力で強化されてるはずだから、それがあればたぶん勝てるかもしれないんだ!」


「どこいくの! 1人は危険だからここにいて!」とライラが叫ぶ。

「ここにいる方がみんなに危害が及ぶ!」

「いいから戻って!」

「考えがあるんだ!」


「……わかった。でもカイト、無理はしないで!」

「ありがとうフリス」と言い残し、俺は告解部屋を後にした。



面白い! 続きが読みたい!


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