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襲来⑦


 ベーゼは札を数枚投げる。

 が、男はそれを避けて弾丸を撃つ。

 ベーゼは弾を華麗に躱し、もう一度札を投げる。

 が、これも当たらない。


 男は柱の裏に隠れ、弾を装填しながら、「ピタ帝国に入隊希望なら、なぜ俺達に歯向かう?」


「歯向かう? 違う違う! 私は自分の強さを誇示したいだけだよ! どこまで通じるかをね!」

「それを歯向かうって言うんだよ」


 男は1発撃ち、ベーゼは左に飛んだ。

 ベーゼの着地点に合わせて男がもう1発撃つと、ベーゼは身体を捻りすぐ真上に飛んだ。

 

「空中では逃げ道がない。今のお前はいい的になる」と男は標準を合わせる。

「しまった……!」


 ベーゼは被弾を最小限にするために身体を丸める。

 両手に札を並べ、扇のようにして顔や頭を守った。


 バンバン!


「狙いを定めるところに隙ができるんだよね!」と、ピーナツの援護射撃によって男は柱の裏に隠れた。


「助かったよピーナツ!」と、ベーゼは綺麗に着地した。

 

「あいつも厄介だな。……おい! お前達! 正面の敵をなんとかしろ!」

「了解です! バンダック様!」

 

 男の合図で、残る3人の兵士はピーナツに向けて銃弾を発砲。

 

 あっぶねえ!

 と、俺やピーナツは扉横に身を隠した。


 半開きの扉には多くの銃痕ができており、当たったところを中心に氷の膜が張り巡らされた。


 やばい! これ1発でもあたると致命傷だぞ!?

 ヴァネッサはこれを全身に浴びたんだよな……頼むからシスターの治癒魔法で回復しててくれよ……!


「目の前の私を無視しちゃあだめじゃない? 隙だらけだよ!」


 ベーゼは兵士の視覚外から札を飛ばす。

 2人の兵士が悲鳴を上げて倒れた。


「よーし! これであとは2人! このまま制圧しちゃおう!」

 

「ちっ! 作戦ミスか。……所詮武器に頼りっぱなしの兵士どもじゃこんなところか」

「バ、バンダック様! このままじゃやられてしまいます! つ、次の指示をお願いします……!」

「そんなものはない。後は自分でなんとかしろ」

「ええ!? そ、そんなバンダック様……!」


 兵士はおろおろと震える手で銃を構えるが、既に真上に飛んでいたベーゼが数枚の札を兵士に向かって投げた。

 見事命中し兵士はばたりと倒れた。


 ……やったぞ!

 これで残りはヴァネッサをやったあいつだけだ!

 

「これで残りはあなただけだね! 私達って思ったよりも強いのかな!?」

「下級兵士を倒したからって図に乗るなよ、ガキが」


「ピーナツ! 後は私にやらせてね!」

「気をつけて戦ってよ!」

「もちろん!」

 

「タイマン希望か、面白い。……お前、入隊希望とか言ってたな? 俺が直々に審査してやるよ」


 男はベーゼに向けて銃を構えた。


「その銃はもう見切ってるよ? 何度撃っても同じことさ!」と、ベーゼは札を投げる。

 

「じゃあこれも避けてみな」


 バンと銃声が鳴り、ベーゼは回避行動をとるが、「……え? なんで」と、腰に弾が命中。

 出血跡がみるみると凍り、ベーゼは片膝をついた。


「ベーゼ!」とピーナツは叫んだ。

 その顔はひどく驚いている。

 

「まずいよピーナツ! あいつ、かなり強い!」


 兵士が撃つ弾をベーゼは見切っていた。

 なのに今の1発をベーゼは回避できなかった。

 これを説明付ける理由は1つ。


 あの男……魔法で弾をブーストしたんだ!


「どうして……? 私、避けられなかった……?」

「戦闘スキルはそこそこあるようだが、知識の方は乏しかったようだな」

 

 男はゆっくりとベーゼに向かう。

 ベーゼは凍った腰に手を当てたまま、片方の手で札を持つ。

 

「ピタ帝国が使う氷滴銃は、弾に衝撃で凍る微量のマナが配合されている。一方で、銃本体にはなんの細工もしていない。もし、魔力を持つ者が銃本体にマナを送れば、魔力を持たない下級兵士と比べて威力や速度が跳ね上がる。俺みたいな魔法の応用が利くハイスペックな人間と戦うなら、その力量をしっかりと図るべきだったな」


「魔力の応用……? それでパワーアップできるなんて……ほんと魔法ってなんでもありね!」


 ベーゼは札を構える。

 

「その格好からして、お前は忍びの里から来たのだろう? お前達が魔法を使えないのは知っている。だが、少なくとも兵士を目指すなら学んでおくべきだったな。……まあ、その実力なら試験に出たとしてもどうせ残れない。お前は落選だ。じゃあな」


 バン、バンバンバン!!!


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