襲来④
「助けるって、どうやって助けるの!?」
秘策があるのか、エマはにっこりと答える。「ノエル姉さんだよ」
「ノエル!? 生きてたのか!?」
「ええ」
ノエル……生きてたのか……。
……あれは2年前、魔族の侵攻が始まってすぐのことだ。
人間側は魔族に対抗するため、主要国を中心に戦力を集めた。
この時ピタは徴兵令を敷き、その際、シスターはやむなく1人のメイドをピタに送った。
それがノエル。
エマの姉さんだ。
もちろん俺達は納得しなかった。
即日発令、即日徴兵という行き過ぎたピタの横暴に抵抗するという意見も出たが、軍令違反を避けるためにノエルは俺達に黙って独りピタに向かったのだ。
戦争で仕方がないのはわかるが、この件で俺はピタのやり方にムカついた。
シスターの一番弟子に近いメイドだったノエルは、『慈教』の教えを守り、まだ完全なるシスターではないにせよ、大聖女マーテルの恩寵によって治癒魔法が使えた。
そしてピタがその能力を見込んだのか、ノエルは最前線に配属された。
ところが2か月前、前線で暴動が勃発。
それを機に毎週届いていたノエルからの手紙は途絶えた。
その瞬間、俺達はノエルの戦死を悟った。
「よかった……。ほんとに生きててよかった……」
「感傷に浸るのはノエル姉さんとの再開までとっておきなさい。……いい? カイト。ノエル姉さんの話だと、シスター達はピタに殺されないわ」
「……戦力強化か」
聖堂で男が言ってた。
兵にするって。
「ヒーラーとは違い、シスターは病気や五感異常も治せるから大幅な戦力維持が見込める。だから捕まった後は必ず城内のどこかに軟禁される」
「それをノエルが救うのか」
「そうよ。私達が今からするのは、合流した後すぐに脱出できるよう、逃げる準備を整えること。ピタに行くのはそのためよ」
「なるほど……。でも、逃げた後はどうなるの? もしかしてまた流浪の旅に出るの?」
「次の聖堂が見つかるまでそうなるね」
「そっか……」
シスターが今の聖堂を持ってからまだそう長くない。
なのにまたあの過酷な旅に出るのか……。
せっかく、シスターの夢がまた一歩前進したというのに……。
「仕方ないよ。時代は選べないから」
「そりゃわかってるけど……! でも……」
苦労して今の平穏を手に入れたシスターの世界が、また壊されていく光景を俺は見たくない!
「なんで戦争はなくならないのかな……」
なんで魔族は襲ってくるのかな……。
俺達はただ、平和に暮らしたいだけなのに……。
なんで……。
「カイト……」
悔しがる俺に、エマは共感するように身体を預けた。
「エマちゃん! 前から誰か来てるよ!」
御者の声でエマは身体を起こした。
……軍服を着てないってことは、あいつらの仲間じゃない。
来訪者か。
「今はやってないと教えてあげなくっちゃ。……御者さん、停めてくれる?」
馬車は速度を落とし、来訪者の前で停まった。
エマは身を乗り出し、「こんにちはお2人さん! これから聖堂に行くの?」
「こんにちはー! そうよ。私達は今から合格祈願に行こうかなって!」
黒髪で団子結びのこの女はくノ一なのか、露出の多い藤色の装束を着ている。
巻いてるピンクの帯も、背で蝶結びしてる割には引きずってるし。
後絶対サイズあってないだろ。
……てかその恰好寒くないのかな? 今は冬だぞ!?
「さっき馬車が何台か通ったけど、噂通り人気な聖堂なんだね?」
こっちはピーナツカラーの短髪男か。
服装は普通だけど、腰に付いてるあれは……銃か?
「人気は人気だけど、今はやってないの」
「あら、どうして?」
エマは俺を見る。
隠したってしょうがないというふうに頷くとエマは、「襲われてるの」
「ええ!?」
「それはほんとなのか!?」
「私達は避難のためにピタに向かってるけど、戻るなら一緒に乗ってく?」
2人は顔を見合わせ、頷く。
「僕たちで解決するよ!」
「ええ!?」
ええ!? ほんとに!?
「私達はピタ帝国の志願兵なの。明後日、ピタの入隊試験を受けるからその景気づけに助けるよ! ついでに実力も試す!」
くノ一はやってやるぞと構えた。
「ちょ、ちょっと待って! なら尚更だめだよ!」
「えーどうして!? もしかして、兵士になってないから実力不足だと言いたいの?」
「いやいやそうじゃなくて、襲ってるのはピタの兵士なんだ」
「えー!? うそー!?」
「なんだって!?」
「どうしてピタ帝国の兵士が聖堂を襲うのよ!? あー! もしかして何か悪いことでもやってたの!? なら許さないよ?」
おいおい……どうしてそうなる……。
「違う違う!」とエマは手を振り、「そうじゃなくて、ピタはシスターの治癒魔法を軍事的に利用したいから、実力行使で確保しに来てるの!」
「なるほど……。確かに今も魔族との戦争は続いてるから、ピタ帝国も躍起になってるってことか」
「なら、もしかしたらここで実力を認めてもらうチャンスかも」
ピーナツヘアーの返しにくノ一が応える。
このくノ一……もしかして、戦いたがりか?
「えーと……」とエマが困惑するのもわかる。
「うん、決めた! やっぱり助けにいく!」
いやいや、どうしてそうなる……。
普通なら首をつっこまないだろ。
「ベーゼは走り出すと止まらないからな」
「ここで名を売れば、入隊試験も免除されたりして。……さあ、そうとわかれば行くよ、ピーナツ!」
2人は歩き出した。
「あの! 危ないから戻って」と、エマは更に身を乗り出す横で、俺はふと思った。
……待てよ。
もし、この2人がある程度戦えるなら、シスターを助けられるかもしれない!
だって俺には、新スキルの『隆起』がある……!
面白い! 続きが読みたい!
もしもそう思われましたら、
ぜひとも下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします
最高なら星5つ、最悪なら星1つ、読者様のお気持ちをお教えくださいませ!
ブックマークもいただけると嬉しいです><
どうぞよろしくお願いいたします!




