襲来①
それじゃ勉強の続きでもするか。
時が流れ12時。
カーン、カーンと鐘が鳴った。
「あーーーー勉強したーー!」
お腹空いたし何か食べるか。
大部屋に行くと、食卓にパンが置いてあった。
シスター達はまだ聖堂か。
……大変だよな、忙しいとお昼抜きみたいな感じだし。
昨日お祈りに遅れちゃったし、これ食べ終わったら行くかー。
食後、聖堂に入った。
最後列の空いた席に座ってシスターの演説を聞く。
その後のお祈りも済ませた俺は、ただぼーっと聖堂にいる人達を眺めていた。
あの軍服の人また来てる。
ああ、あの人も軍服だ。
あの恰好はどこの国の人だろ?
赤ちゃんも来てる。偉いねえ。
あれ、また軍服の人だ。今日は誰かの命日とかかな?
シスターは囲まれてて見えない。
メイド達は列を作ったり話したりと忙しそうだ。
「ちょっと、困ります!」
「ほんまに頼むから! シスターなら助けてくれるんやろ!」
ん? 前が騒がしいな。
近づくと、みんなの前で1人の男がシスターの腕を掴んでいた。
「もう時間があらへんのや! 頼むシスター! 助けてくれ!」
「私はお断りしたはずです……! 手を放してください!」
「シスターは人の悩みを解決すんのが仕事なんやろ!? だったらわいの悩みも解決してえな!?」
……なんだあいつ!?
あの男って結構な頻度で現れる人だ。軍服を着てるからピタ帝国の兵士っぽいけど、なんで兵士が問題を起こしてる?
「シスター! 今日は今までのようにはいかへんのや。一緒に行く言うまでこの手離さへんからな!」
「痛っ……!」
おい! あいつ俺のシスターに何してるんだよ!?
俺は「おい!」と叫んだ。
そして飛びかかろうとする。
が、その前にヴァネッサが動いた。
「フロムビッチ様、そのお話は何度もお断りしたはずです。シスターはピタ帝国には参りません」
「そんなもん百も承知や! でもな、こっちだって事情があるんや! 頼むシスター、ピタに来てくれや……!」
男はシスターの手をぐっと引く。
シスターが苦痛の表情を浮かべる。
「おい!!!」
我慢できずに俺は叫んで前進、「その手を放せばかやろう!」と男を押し倒した。
「カイト!」
シスターとヴァネッサは、押した拍子に倒れた俺に駆け寄る。
「大丈夫!? 怪我は?」
「大丈夫だよシスター。それよりシスターは平気か?」
「ええ、私は大丈夫……」
「そうか、よかった」
「あいててて……。おいガキ! 何すんねん!」
「それはこっちのセリフだ、ばかやろう! シスターに何してくれてんだよ!」
立ち上がった俺はシスターを守るように前に出る。
男も立ち上がって汚れを払う。
「うるせえよ、ガキはすっこんどれ! ……シスターさんよ、こっちにはもう時間がねえんだわ。もうすぐ戦争が始まっちまう。この平和な環境を守りたかったら手え貸せ!」
「やはり軍事目的でしたね……。何を言われても私の気持ちは変わりません! お帰りください!」
「……わいはよ、この国が好きなんや。だから、この国を守りたいって気持ちで兵に志願したんや。でもよ、知ってるか? ピタは敵が多い、多すぎるんや! このままだと、のまれちまうんだわ!」
「……関係ありません。個人的な思いで自分を突き動かすことはご立派ですが、他者を巻き込む理由にはなりません。私には私のやりたいことがある……あなたのその悩みを私は解決成しえません!」
「フロムビッチ様、シスターは答えを出しました。さあ、お引き取りください」
ヴァネッサが冷静に言うと、男は大きくため息を吐いた。
「だったらもう、力ずくしかねえわな……」
男は懐からナイフを取り出し構える。
「予定変更や! プランBでいく!」
男が声を張り上げると、周りにいた来訪者の数人がナイフを手に持つ。
おいおい嘘だろ……!?
ここは聖堂だぞ!? 何考えてるんだこいつら!?
「エマ! カイト! あなた達は来訪者を避難させて!」
「わかりました!」
「え、でもシスター大丈夫なの!? 相手はナイフを持ってるよ!?」
シスターは攻撃魔法を覚えてない、というか使えない。
前に言ってた、「私は攻撃の魔法が使えない」という言葉の意味が、シスターの責務であることを俺は知ってる。
だからこそ、来訪者や俺たちのために、先陣きって戦うシスターの姿がかっこよく見えると同時に心配だった。
「大丈夫よ! さあカイト、みんなの避難を!」
「……わかった! 無事でいてよ、シスター!」
シスターが頷く。
俺は指示をもらうため、既に避難誘導を始めたエマの元へ向かう。
「バンダックはわいとシスターを確保する! 他の者は援護に回れや!」
男たちが動く。
「フリス! ライラ! あなた達は足止めを! ヴァネッサは私のサポートをお願い!」
メイド達は「はい、シスター!」と声を合わせた。
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