SS1 カイトの過去
本編の補填やキャラクターの掘り下げ用にSSを書くことがあります。
本編はカイト視点、SSはその時のキャラクター視点です。
エルメキア暦710年の春、俺は勇者パーティに加わり魔王討伐の旅に出た。
旅路は困難を極めたが、仲間との助け合いで1人の脱落者も出さず旅は順調に進む。
同年の冬、無事に魔王城に到着。
最後の村を出て15日目ということもあり、物資はほとんど残されていない。
だけど、俺達は短期決戦を覚悟し魔王城の中に入った。
もちろん勝算はあった。
魔王城の見取り図は持っていたし、敵主力の数と守衛場所は盗賊のセブンスが調べてくれたから、それで作戦が立てられた。
1階の大広間、2階の大階段での戦闘を終え、3階の王座の間でついに魔王と対峙。
戦況はほぼ互角、戦いは持久戦だった。
そして数時間にも及ぶ激闘の末にその時がきた。
勇者ロイドの攻撃が魔王に届くよう、魔法使いのシーラが初弾を与え魔王の気を引く。
反撃する魔王の一撃を俺が受け止めると、聖女アリアのバフを受けたロイドが魔王の首に致命傷を負わせたのだ。
これが決め手となり魔王は地に倒れた。
だがロイドがトドメを刺そうとするも、魔王は立ち上がり闇の魔法で姿を消してしまった。
一瞬、俺達は魔王を取り逃がしたのかと焦ったが、アリアの機転で追跡ができた。
魔王の居場所が判明し、俺達は馬車を走らせた。
距離からしておよそ丸1日の移動だ。
勇者の剣には魔物用のエンチャントが掛かってある。
魔王とはいえすぐの回復はできないだろう。
俺は今、馬車でこれを書いている。
昂る高揚で眠れないから、気持ちの整理としてだ。
そのおかげでようやく眠気がきたよ。
いよいよ明日が最終戦だ。
気を引き締め……そして、絶対に勝つ。
カイト
――――――――
「……この手記はどうしますか?」
「いらぬな。捨てておけ」
「ならもらってもいいですか!?」
「物好きなやつだな」
「えへへ」
「では、私はそろそろ城に戻る。手筈通りその赤子も対処しておくのだ、よいな?」
「もちろんです! 任せてください、皇女様」
――――――――
「……ふう。さて、この辺りでいいかな? ……ん~。辺り一面雪だし、今は陽が出てるけど風は冷たいし、このまま赤ちゃんをここに置いたら凍えちゃうよね……よし! 誰か来るまで一緒に待っててあげるね〜カイトちゃ〜ん」
…………
…………
「誰もこないなぁ。ほんとにこの場所であってるよね? ……うん、あってる。……と、思う? あれ? この地図どっちが上だっけ!? あっ! 困った~! 今の場所がわかんないや! ……まあ、いいかここで! そのうち誰かきてくれるでしょ!」
…………
…………
「……にしても、皇女様はすっごく強かったね〜。カイトちゃんは王国でもトップクラスの騎士だったんでしょ〜? なんだっけ、高潔の聖騎士だっけ? なのに戦いが始まると、皇女様はすーぐカイトちゃんを赤ちゃんにしちゃうんだもんね〜。すごすぎだよね〜」
…………
…………
「あっ! きたよカイトちゃん! あっちから人がきた! ……それじゃあお別れだね〜。お姉さんはもう行くけど、カイトちゃんはちゃんと立派になるまで帰ってきちゃだめだよ〜。……あ! あの紙がない! あれれ……どこにやったかな……あーあったあった! ふ〜よかった〜。これがないとカイトちゃんの名前も誕生日もわからなくなっちゃうもんね~」
…………
…………
「……無事に見つけてもらえたね。……じゃあね、カイトちゃん。まずは能力が目覚める11歳までしっかりと生きるんだよ! ……それじゃね、ばいば〜い!」
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