ヴァネッサ⑤
「すごい……! すごいよカイト! このブラジャー、すごいよ!」
ヴァネッサの驚きと喜びに満ちた表情。
成功してよかった……。
このタイミングの成功で、念入りの解釈もまた少しわかってきた。
おっぱいを触って揉む。
そして突起のところも触る。
そしたらブラジャーが出せる!
しばらくの間、ヴァネッサは鏡の前でポーズをとっていた。
行動が丸っきりシスターと同じでちょっと面白かった。
ヴァネッサはメイド服を着直し、「どう?」と聞いてくる。
「どうって聞かれても……」
胸を強調するようなポーズをとってるけど、ヴァネッサは控えめなおっぱいだからあんまり変わらない気がする。
……いや、ここは機嫌をとっておいた方がいいか。
「わーすごいー。胸がおっきく見えるー」
「やっぱりそうだよね!? ほんとにブラジャはいいね!」
めっちゃ喜んでるよ……。
まあでも、ヴァネッサに恥ずかしい思いをさせちゃったから、これくらいいっか。
俺は窓を出し、スキルツリーを確認する。
スキルツリー
ブラジャー発現(上限回数1。残り0)
振り分け可能ポイント2
1日あたりの回数上限値+1(必要ポイント3)
新スキル、隆起の習得(必要ポイント2)
新スキル、沈降の習得(必要ポイント2)
シスターとヴァネッサの分で振り分けポイントが2になってる!
明日で上限回数を増やせるな。
うん、着実に成長してる!
「そうだカイト」
「なに?」
「ブラジャーのお礼に、1ついいこと教えてあげる」
「いいこと? 聞きたい!」
「カイトがブラジャーを出す時のスペルあるよね?」
「ブラジャーショーアップ?」
「そう、それそれ。それね……すっごくダサいよ」
「……え? ダサい?」
「うん。カイトのその力が魔法なら、スペルは自由にできるんでしょ?」
確かに魔法なら自分でスペルを調整できる。
日常会話に出てきそうな言葉をスペルにすると、予期せぬ暴発が起きたりするリスクがあるから、大抵は凝ったスペルにするのが主流だ。
一定の魔力を必要とする魔法に関してはスペル申告の制度がある。
もしも、俺のこの能力が魔力の源『マナ』を消費して発動されるものなら、魔法局で手続きしなくてはならない。
もちろん例外もあって、シスターの治癒魔法みたいに『詠唱』が必要なら、スペル申告は不要とされる。
「この能力が魔法なのかはまだわからないけど、変更はできるよ」
「そう。ならいいネーミングがあるけど、変えてみない?」
「どんなスペル?」
ふふーんと鼻を鳴らし、ヴァネッサは勢いをつけて両手を前に突き出す。
「ブラ・デ・ポン!」
「……え?」
「ブラ・デ・ポン!」
「いや聞こえてるよヴァネッサ。えっと、それは……地元の料理名?」
「違うよ! カイトの新しいスペルだよ」
「えー嫌だよそんなの」
ダサいとかじゃなく、なんか心に響いてこない。
それならまだブラジャーショーアップのままでいたい。
「どうして嫌なの?」
「だって全然かっこよくないもん」
「なるほどねー。かっこよさを重視したいと。……わかった。じゃあはい、考え直したからもう一回いくよ」
今度は後ろを向き、振り返りながらもう一度両手を前に突き出す。
「ブラ・デ・バーン!」
「…………」
「どう? かっこいいでしょ?」
「嫌だよ!」
「どうしてよ!」
「だって鍋料理みたいだもん! それに変えるぐらいなら今のままがいい!」
「いいスペルだと思ったのにな~」
俺的には全然ブラジャーショーアップでかっこいいと思うんだけどな……。
でもやっぱり自分のスペルはみんなにかっこいいと思われたいし、何か考えてみるか。
「そのスペルにはしないけど、かっこいいスペルはまた考えておくよ」
「そっか。ちょっと残念」
残念て……。
「さてと、それじゃあブラジャーも貰えたし、シスターのところに戻るね」
「あ、うん。わかった。お仕事がんばってね」
ありがとうと応えながら、ヴァネッサは部屋を出ていった。
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