鉱の虎と月の兎
巡る十二の年のうち
この年この日に一度ずつ
あらがねのとらが
つきのうさぎに
語りかける儀式があります
命を剥き出す巌の上より
星の命を
一年守護してまいりましたが
これより月に鎮座まします
偉大な詠み手の皆様に
われらが任をおあずけします
どうか光る月の陰日向より
小さくか弱い命と思いを
その御力で見守り給いますよう
何卒よろしくお願い申し上げます
それに応えて
つきのうさぎ
遥かな宇宙の月の陰より
灰の頂の岩に佇む
あらがねのとら
に語ります
月の陰より
星の命を護る任
灰の頂の優しき友より
しかと預かり賜った
われらが友はこれよりしばし
ゆるりと休まれるがよかろう
そしてとらとうさぎの遣いは
星がぐるりと一巡するまで
互いの友好を確かめた後
互いの守護する世界へ還り
星を見守り続けるのです