08 俺は招鵺で守り手だ
この物語は、後を少し考えて作られています。
意味が分からない描写があります。
軽い気持ちで読んでいってください?
妖怪と戦った次の日、招鵺は第九番倉庫で五郎と話していた。
「僕が調べた情報によれば、この辺りには昔『火車』という妖怪が多く住んでいたそうです」
「つまり、前に俺を轢いたのは火車だった、てことか」
どうやら、五郎は博物館で妖怪について調べ、自力でここまで知ったらしい。
(美亜の言った通りだな。それにしても…五郎は頭が良すぎないか)
「それを踏まえて、こんなのを作ってきました」
そう言って、五郎は薄紫色のお守りを渡してきた。招鵺はそれを手に取ろうとし、すぐ引っ込めた。
「どうかしましたか」
(なんだ…今、触ったらヤバそうな予感がした。もしかしてあれは)
『これは…『魔除けのお守り』ですか。それも高品質の』
美亜が言うには、高品質のお守りらしく、招鵺がそのまま触っていたら、最悪死んでしまうかもしれないらしい。
「…招鵺君、何か隠していませんか。それとも、悩んでいませんか」
「五郎…」
二人は何も言わず数分が経ってしまった。それを見かねた美亜が招鵺に一言言った。
『あーもう。招鵺さん、別にお友達に隠す必要はありませんよ』
「そうなのか…実はな」
招鵺は昨日会ったことを話した、美亜に出会ったこと、火車に殺されかけたこと、妖刀と契約したこと、そして…火車を…生き物を殺そうとしたこと、全てを話した。そのうえで招鵺はいった。
「俺は生きていていいのかな。考えてみれば、本来『時雨招鵺』という人物は火車に殺されるはずだった。でも、記憶を失って生き延び今の『俺』がいる。それで俺が『時雨招鵺』として生きるのは正しいのか」
この話を五郎は黙って聞いていた。そして、言った。
「別に生きていてもいいんじゃないですか。誰が何と言おうと『僕から見た招鵺君』は変わっていません。人の為に行動し、責任を持とうとする。例え今の招鵺君が偽物だとしても、貴方は『時雨招鵺』であることには違いないのですから」
その言葉は、心のどこかで招鵺が、俺が欲しがっていた言葉だったのかもしれない。記憶が無く自分を自分と言えない俺を、招鵺だと認めてくれる言葉を。
『招鵺さん、重要なのは名前ではありません。その道をどう進むかです。招鵺さんが自分を招鵺と思えなくても、別にいいんです。本当に招鵺さんでないのなら、別の名前で呼ぶはずですから」
「そうか…そうだったのか」
気がつけば、俺のことを美亜が抱きしめていた。まるで、母親が子を慰めるように。
ガタッ ガラガラガラ
「え、妖狐、本物…」
「おっはよー、て誰ぇぇぇー」
美亜を見て驚き立ち上がった五郎と、元気に入ってきて驚いた音。そして、それを笑って見ている美亜と、引きつった笑みを浮かべる俺『招鵺』。うるさい一日がいつも通り始まろうとしていた。
『俺は招鵺、時雨招鵺。妖刀と契約し美亜と共に世界の守り手となったモノだ。
そうだろ――の俺』
「はぁ、火帆はこんな所に入らないといけないのですか…」
ボコ ドカ バシャン
「ご、ごめんなさい。本当に悪かったと思っているから」
「そうか、後はレイに任せるとしよう」
「そんなぁー」
たんこぶをたくさん作った金髪の女の人が土下座をしていた。ここは世界の狭間のどこかにある場所『無録』。そこで、主である『―――』が『命乱三舞』の主『天理』をボコボコにしていた。
「本当に分かっているのか。美亜を向かわせたが、なぜそこに無録…いや、『紅月美零』がいる。あいつは」
「言わないで、それ以上は。こんなの間違ってることは分かってる。でも、『凍無』と約束したから。いつか…いつか、彼女達を救うって」
―――は美亜達を見た。とても楽しそうに談笑している。あんな美亜を見るのはいつぶりだろうか。
「美亜はずっと一人なの知っているでしょ。白亜は部下、鎖依はいない。もう、後は」
「…ひとつ言わせろ、お前は今の美亜がどうなっているのか知っているのか」
「どういうこと。今のってまるで…まさか」
―――は一度だけ頷くと、天理は驚き頭を抱えた。
「私はなんてことを」
「あの美亜は『無録美亜』であって、『紅月美亜』ではない。そして、それを美亜は理解しているんだ」
天理は一度深呼吸をすると、地に手を付け土下座をした。
「―――様、どうか、世界を救ってください。お願いします」
「分かっている。だが、そのためにはいろいろ協力してもらうぞ」
世界は進む 例え時間が無かったとしても
ひとまず自身の思いと決着をつけたが招鵺とその中身
そんな招鵺の周りでは色々な思惑が動き始めていた
次回、カミタチによる踊り続ける狂想曲『二章』を待っていてください。