第93話 説得
やはり、ジャッジメントはサイードが作った組織なのだ。
組織のリーダーが動かなければ、下にいる者も動かないようだった。
ならば、とコハクは未だ話し合いに参加しようとしないサイードに近づいてまくしたてた。
「サイード! この際だから言うけど、あんたの娘になるリィンは、あんた達が襲ったブルー・ミストラルで死んだわ。直接手を下したかどうかは知らないけど、そうでなくてもあんたが殺したようなものよ」
「……そんな、う、嘘だ!」
コハクから知らされた驚愕の事実に、サイードが目を見開く。
「そしてクレハもあんた達を守る為に悪魔になってしまった。このままあんたは好きな人すらも殺すつもりなの!? クレハはあんたを殺せなかったのに、あんたは見殺しにする事でクレハを殺すつもりなの!?」
叫ぶ内に襟首を掴み上げる体勢になったコハクに、サイードは先程までの様子とは違って、敵意を込めて睨みつけていた。
「……うるさい、何も知らないくせに、勝手な事を言うな」
だが、そんな敵の様子にもコハクは言葉を止めない。
「何も知らなかったら、こんなお節介焼いたりしてないわよ。あたしはクレハと散々今まで話をしてきたんだから。クレハには果たすべき使命があった。守らなければいけない人達がいた。いつも頑張ってたのよ。それでも確実な方法をえらんであんたを殺さずに、生かす事を選んだんじゃない! それが一番大切な事だったから。ずっと変わらない大事な思いだったから!」
「っ!」
コハクは手を振り合えて、サイードの頬を引っぱたいた。
リシュリーやジャスティスが動こうとしたがコハクの邪魔をさせないように、裕司達が制した。
「あんたの信念は、あんたが思ってる大事な事は、クレハを見殺しにする事なの? 自分の胸にちゃんと聞いて見なさいよ!」
「俺は……俺の信念は」
正規の無かったサイードの瞳に、少しづつ光が戻っていく。
「俺はただ、俺が大事だと思った人達が幸せに生きられるようにと。その為に、そうだ新しい世界を作ろうとしていたんだ」
「リィンは、あんたが殺したあんたの娘は、私の親友はもう決して生き返らないわ。でもだからこそその後悔を繰り返さないように生きてかなきゃいけないのよ」
そのコハクの言葉が、とどめだったようだ。
「分かった、今だけお前たちに協力してやる」
「私達だって今だけよ」




