第88話 優しい家族
しかし、そんな心配はもうしなくてよくなったのだろう。
ラシュータとナジェルは、微笑んでいた。
「でも、今のコハクはもう大丈夫。復讐だけを目標としなくてもやっていける。そう思ったから、この本を渡す事にしたのよ」
「今のお前なら、きっと力の使い方を間違えたりはしないだろう」
二人の言葉を聞いてコハクは、何かを思い出したようだった。
「ひょっとして、さっきの聞いて……」
裕司とコハクしか知らない、ほんの少し前のやりとり。
それをラシェータ達が聞いていたとすれば、そんな話になるのも分からない事ではなかった。
「聞き耳を立てるつもりはなかったのだけれど、偶然聞こえてしまって。ごめんなさいね、コハク」
「ううむ、すまんかったな」
「……まあ、偶然なら仕方ないです」
奥歯に物が挟まったような態度だったが、かろうじてコハクは不満の言葉飲み込んだ様だった。
「さっそく読み込まなくちゃいけないわね。ありがとうございます、ラシェータおばさん、ナジェルおじさん」
「コハク、どんな選択をするにしても、無茶はしないでね」
「かならず家に帰って来るのだぞ」
礼を言ったコハクを、ラシェータとナジェルは順番に抱きしめていく。
心配でないはずはないし、止めたくないはずはない。
けれど、二人はコハクの意思を尊重してくれるようだった。
「はい、絶対に。約束します」
(本当の家族みたいだって言ったら、コハクちゃん達はどんな反応するかな。ううん、嫌な顔するはずないよ。そもそも血が繋がってるとか、繋がってないとか関係ない。だってこんなにも、互いを思いやってるんだから)




