第87話 隠された本
話を終えて、避難所へと戻るとラシェータとナジェルに話しかけられた。
真剣な表情の様子の二人は、真っすぐにコハクを見つめながらある本を差し出した。
「これは……?」
「かなり苦労したけれど、コハクが必要になると思ってあらかじめ家から何冊かの魔法書を、持ちだしていたのよ」
「この本には、クレハ様を助ける方法が書かれているだろ。お前が禁忌魔法に手を出さんように、隠しておいた分なんじゃがな……」
コハクに隠し事をしていたという負い目があるからだろう。
ラシェータとナジェルは気まずそうな表情になった。
コハクはそんな二人に尋ねる。
「でも、だったらなおさらどうして」
二人は互いの顔を見合わせて、何かを決意したような表情を浮かべた。
「本当はコハクには復讐なんてしてほしくなかったわ」
「わし等の気持ちは分かってるな?」
「え、ええ」
意図した返答で無い事に戸惑いながらも、コハクは相槌を打った。
「けれど、あの頃のあなたから目標を取り上げてしまったら、どうなってしまうか分からなかったから」
「臆病者であったわし等を許してくれ、コハク」
「二人共、そんな事を考えてたんですか?」
裕司達にとっては知らない時間の話だ。
里を焼かれてすぐのコハクがどんな状態だったかなどは、どうやっても知る事が出来ない。
けれど、目の前のラシェータとナジェルの様子を見ていれば、それが良くない状態だった事ぐらいは用意に想像がついた。




