第86話 コハクの信念
「コハクちゃんはきっと何が一番大事な事が分かってるんだよ。クレハさんみたいに、大事な事を見失わない強い信念を持ってるんだ。だから、復讐なんて事をしようとしてるコハクちゃんの事を僕達は止められなかった。だって、悪い事をしてる人にはとても見えなかったから」
コハクは首を振りながら、不満そうな顔をする。
「意味が分からないわ。私はサイード達に復讐しようとしてたのよ。それって悪い事でしょ?」
「ううん、きっと。そうじゃないよ。本当にコハクちゃんがしたかった事はそんな事じゃなかったんだよ」
「どういう事?」
本格的にいよいよ理解が出来なくなったという風なコハクに、裕司は強い口調で言い放った。
「コハクちゃんは理不尽に苦しめられる人達に何かしてあげたいって思って、行動してるんだよ。だって、そうじゃなかったらホワイト・エールの町で住民達の為に戦ったりできない。復讐の事を横においたりなんてとてもできないよ。コハクちゃんが頑張ってるのは、死んじゃった友達の為だったり、目の前で傷ついてる誰かの為だったりするから、だからコハクちゃんのした事は間違いなんかじゃない!」
「何よ、それ」
コハクは口を尖らせる。
「それが本当だったらあたし、自分の事にすら気が付かなかった馬鹿みたいじゃない」
「本当だったらじゃなくて、本当なんだよ。僕はコハクちゃんの事、他の人の事を一番に思いやれる、真っすぐで優しい人って事だと思うな。だから復讐を理由にするのはどうかと思ってるけど、コハクちゃんのやってる事は間違いなんかじゃないんだ」
裕司は思った事を素直にそう口にするのだが、なぜかコハクにそっぽを向かれてしまた。
心なしか、少しだけ顔が赤くなってる様に見えた。
「コハクちゃん?」
「ふんっ、調子の良い事言っちゃって」
「ええっ!」
どうして怒らせてしまったのか分からない裕司はおろおろするしかない。
何が悪かったのか思い悩んでいると、小さな声でコハクが呟いた。
「でも、ありがと。あんたの信念、見つかるといいわね」
「えっ」
「何? 空耳でしょ? あたしは何も言ってないから」
それが精いっぱいの不器用なコハクの感謝の言葉だと分かって、裕司は心が温かくなった。




