第83話 リィンの正体
「ええ、どうして町のお偉いさんが、あたしみたいな一般人を話し相手に選んだのかっていう事」
「でもそれは……」
裕司は以前に聞かされた話の内容を思い起こす。
ブルー・ミストラルで唯一生き残ったコハクの心が心配だったから、とクレハは言っていたが、違うのだろうか。
「里に、クレハ達の娘がいたからなのよ。前に子供がいる事だけは話してもらったから」
「え、ええっ!」
あまりに聞かされた唐突な事実に、裕司は普段は上げないような大声を発していた。
コハクが耳を抑えて抗議する。
「ちょっと、うるさい」
「あ、ごめんね。でも、どういう事? クレハさんの娘さんって、行方不明なんじゃ……」
「ええ、でもクレハは優秀だった。一生懸命に足取りを追って、その娘がブルー・ミストラルにいる事を突き止めたらしいのよ。その時はどうして離れ離れになったのかは教えてくれなかったけどね」
「そんな話が……」
コハクは表情を暗くして、その時の事を思い出すように続ける。
「クレハはリィンの死を凄く悲しんでたわ。でも、その娘があたしの友達だって知った時、少し喜んでくれた。本当なら知れなかった日常の話をたくさん知る事ができたからって、この出会いに感謝したいって」
「……」
裕司は言葉をなくしてしまった。
コハクの口から旅の間に時々聞かされる事があった、リィンという人間の話が、まさかそういう風に繋がるとは裕司はまるで思ってもいなかったからだ。




