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アルカディアの魔法使い  作者: 仲仁へび
第七章

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第79話 クレハの決意



 クレハは己の信念を捨てたわけではなかったのだ。

 裕司達に言った事は嘘だった。


 本当の事を話していたら、きっと裕司達は止めていただろう。

 だから、今までずっと隠していたのだ。


 コハクが手紙を取り落とす。


「うそ、そんなクレハ。何でよ」


 コハクと共に手紙を読んでいた裕司達が、互いの顔を見合わせる。

 かける言葉がすぐに思いつかなかった。


 その時、外で一際強く轟音が響いた。

 巨大な何かが暴れ回っている音だ。


「イフリートが倒されてしまったのでしょうか。だとしたらあの悪魔……いいえ、クレハさんはこれからどうするんですの? 意識はあるんですのよね」


 コハクは答える。


「いいえ、憑依召喚は自分の体を触媒にするだけでなく、意識も乗っ取られてしまうの。今はまだかろうじて敵味方の区別がついているかもしれなくても、じきにそれも分からなくなるはずよ」

「そ、そんな!」


 聞いた裕司はショックを受けた。


「コハクちゃん、何とか戻せないの!?」

「無理よ。今ここにクレハ以上の魔法を使える人はいないわ」


 状況は八方塞がりの様だった。


「とりあえず、まずは逃げませんと。距離を取らないと、対策を考える前にやられてしまいかねませんわ」


 何をするにしてもまず考える時間が必要だと加奈が主張する。

 その通りだと思った裕司は、うずくまっているサイードらしき男性を見る。


「でも、この人どうしよう」


 そんな姿を一瞥して、冷たく言い捨てるのはやはりコハクだ。


「おいて行けばいいじゃないこんな奴」

「でも、ひどい事した人だって分かってるけど、このままにして置いたら。クレハさんはきっと悲しむよ」


 裕司の言葉を聞いたコハクは唇をかむ。


「だからって、……私の友達を殺した人間を助けるなんて、出来ないわ」

「コハクちゃん……」

「だから、どうにかしたかったら。あんた達でどうにかしないさい。私はそんな男に手を差し伸べたくないの」

「……うん、分かったよ」


 それがコハクにとってのギリギリの譲歩ならば、仕方なかった。



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