第72話 決裂
自分のしたい事をまげてでも、町の人達を守る。
そう言ったコハクに裕司は辛くなった。
矛盾する二つの気持ちにさいなまれるコハクの表情はとても苦し気だったからだ。
「なぁに、良い子ちゃんぶっちゃって。あたし、あんたみたいな子嫌ーい」
「あたしだって嫌いよ!」
だが、相手はその申し出を聞き入れるつもりはないようだった。
「やっちゃえ!」
ハイドウルフをけしかけてくる。
「この馬鹿!」
戦闘は続行。
コハクは叱りながらも、魔法を放った。
「フラビ・ティ!」
真っ赤な炎の下級が、リシュリーに向かって飛んでいくが、相手はそれを回避した。
ハイドウルフの群れの中でも一際体格の良いものに飛び乗って、それからもコハクの放つ魔法をことごとく避けていった。
しかし、他のハイドウルフもいるので、思った様に狙いが定まらないようだった。
同じ事を思っただろうコハクがこちらへ声をかける。
「フラビ・ティ! ああ、もうちょこまかと邪魔よ! 裕司、加奈。とりまきが邪魔!」
「う、うん!」
「言われなくても、分かってますわ!」
やる事は分かっていた。
裕司は銃を撃ち、加奈は昆でそれぞれ周囲にいるハイドウルフの相手をしていく。
数は多いが一度戦闘したという経験がこちらにはある。
前回は勝敗がつかなかったが、コハクと共に行動している以上は、再度同じ敵と戦う可能性がかなり高い。
狼使いと出会った時に対策法を考えない裕司達ではなかった。
「俊敏ですけど、守りは弱い。なら足を止めてコハクの魔法を命中しやすくさせるだけですわ」
「うん、確実に減らしていかなくちゃ」




