第70話 リシュリー
そこから数分移動して、裕司達は戦いの場所へと着く。
角を曲がった先にいたのは、狼使いの少女だった。
複数の狼達を連れている。
その少女は、仲間らしい他の少年少女から、リシュリーと呼ばれていた。
「きゃはは、それそれっ! あたし達に勝とうなんて百万年早いのよ、その程度? やっぱり人間もアルカミレスも大した事がないわね 弱い弱ーい!」
リシュリーは笑いながらハイドウルフの群れを兵士達へとけしかけている。
「うわっ」
「くそ、気を付けろ! 背後をとられるな」
兵士達は、小回りの利く俊敏な狼に成すすべもなく翻弄されている様だった。
「加奈ちゃん!」
「ええ、私達が相手ですわ」
ここで見逃すなら町へと戻って来た意味がない。
苦戦する兵士達を助ける為に、そこに飛び出す裕司達。
体格を考えれば身長の低い裕司達の方が、相手をするにはいくらか有利だ。
「この子は僕達が引き受けます!」
「だから、他の所に行ってくださいな」
裕司は不思議といつもよりも堂々とした態度で喋る事が出来た
兵士は裕司達の存在に驚いて目を見張る。
「どうして子供がこんな所に」
気を取られたところを、兵士の一人がハイドウルフにやられそうになって、他の兵士が防いだ。
町の中にいないはずの人間が突然目の前に現れたのだから、そういう反応になるのは無理のない事だった。
裕司はあらかじめ考えて置いた事を口にする。
「クレハさんに助太刀するように頼まれたんです!」
「だから、心配は無用ですわ」
兵士は腑に落ちないと言ったようだったが、裕司達が危なげなくハイドウルフ達と叩き始めたのを見て、納得した様だった。
狼使いの少女、リシュリーはそんな光景を見て不満そうだった。
「なぁに? またあんた達なの? 冗談でしょ、うっとおしいわねぇもうっ! 前々からあたし達の事嗅ぎまわってくれちゃって目障りだったのよ。きゃはは! 今度こそ後悔させてやる!! ブルー・ミストラルの時に曖昧になった決着つけてあげよーじゃない!」




