第63話 クレハの信念
生まれてくる子供がアルカディア。
滅多に見ない種族で、そして強い力を持っている。
だが、クレハ達にとってはそんな事は些細な事だった。
種族の違いなど、容易に乗り越えられる。
その時はそう思っていたのだった。
その思に反して現実は甘くなかった。
子供が生まれた直後。
強すぎるその力を恐れた者達が、その子供を二人から取り上げてしまったのだ。
アイレベルという組織。
彼等は、世界中で生まれて来たアルカディアの子供達を隔離し、監視している集団だった。
人々がアルカディアの存在を知らないのも、彼等がそう言って子供らを隠しているからだった。
その事が原因で、クレハとサイードは互いに別の道を歩む事になった。
クレハは、人とアルカミレスとアルカディアが、等しく幸せになれる世界の為に、
サイードは、アルカディアだけが幸せになれる世界の為に、
別々の方法をとる事になる。
話し終えたクレハは一息ついて、自分の考えを裕司達へ告げる。
「今のサイードはおそらく復讐の為に行動しているでしょう。傷ついた彼を止める事はおそらく容易ではないでしょう。私も、我が子となる者と引き離された時はかなり辛い思いをしましたから」
「クレハ……」
沈むクレハに声をかけるコハクは、心の底から心配している様子だ。
「言葉での説得ができる段階はとっくに過ぎています。だから、私は、力づくで彼らを拘束するしかないとそう思っています。コハク、貴方と同じように」
「それは……。私はそうだけど、クレハは本当にそれでいいの?」
コハクは自分の考えを人に押し付ける様な事はしなかった。
躊躇いを見せながらも、罪悪感が窺えるような表情で聞き返した。
「ええ」
頷くクレハの決心は、とても固いように裕司達には見えた。
「でも、分かり合う為に頑張ろうって言ってきたあんたが、何でそんな事を急に? そんな実力行使の手段を取ったら、今までやってきた事はどうなるの? そんなのクレハらしくない。クレハにはあたしみたいにはなってほしくないのよ」
「……時には、己の信念を曲げねばならない時もあるのです、コハク。心配してくれているのにごめんなさいね」




