第38話 特別な人間
「ああ、誰が卑怯もんだって?」
「抵抗できない相手を一方的に傷つけようとする人間が卑怯じゃないとでも?」
「こいつ!」
少年は声を荒げ、怒りの感情をあらわにするが、コハクはその炎使いの前で、女の人を庇うように立ち続ける。
裕司達も、そこに続いて狼狽する女性を立ち上がらせて避難するように言った。
「大丈夫ですか?」
「今の内に逃げてくださいな」
女性はおろおろと狼狽しながら裕司達へと尋ねた。
「あ、ありがとうございます、貴方達は?」
「僕達は大丈夫です、ね? 加奈ちゃん」
「ええ、心配は要りませんわ。こういう荒事に関わるのは慣れていますもの」
裕司は内心の恐怖を押し込めて、女性に安心させるように笑って、その場から遠ざけた。
依然、炎使いと睨みあうコハク。
その杖を握る手は、怒りで震えている様だった。
「何だ、テメェ等。俺様の邪魔しようってぇのか」
不満の色を隠すことなく声に込める少年に、コハクも同様の感情をこめて言い返した。
「邪魔するに決まってるわ。当然でしょ? どうしてこんなひどい事するのよ。私の里を焼いただけじゃなく、どうしてこんな大勢の人を傷つけるような事をするの!?」
「んなもん、決まってるじゃねぇか、人間共とアルカミレス共を皆殺しにする為だ。あんな劣等種のゴミ共なんか、いなくなっちまえばいいんだ」
炎使いの少年は、心底そう思っているとでも言うように、愉快気に笑いながらそう言い放った。
その言葉を聞いていた裕司はショックを受ける。
「ひどい」
「劣等種だなんて、自分の事を特別だとでも思っているんですの?」
その横で、加奈は嫌悪感を示してみせた。
その言葉を聞いていた炎使いの少年は、大きく頷いた。
「ああ、そうだ。俺達アルカディアは特別なんだ」




