第36話 炎使いの少年
声のする方を目指して、ずっと裕司達の前方を走り続けていたコハク。しかし、コハクは突然立ち止まった。
追いついた裕司達は、コハクの視線の先に一人の少年が立っているのに気が付く。
そこにいたのは見た事がない少年だった。
「燃えろ、燃えろ。俺達をあざ笑った罰だ。これは、ゴミの様に扱ったツケなんだよ、全部全部燃えちまえ」
その少年が喋る間にも、近くにある建物は炎に包まれて、焼け落ちていく。
少年は周囲の建物に向けて手のひらをかざし、その度にその先にある家々が勢いよく燃え上がっていた。
おそらくあの少年が何らかの魔法を使って、火を起こしているのだろう。
ここまで来るのに見て来た建物の破壊とは、関係なさそうなので町を襲っている人間は他にもいるんかもしれない。
例えばこの間あった狼使いの少女など……。
「魔法を使ってるんだよね……?」
裕司は首をひねる。
しかし、少年はコハクの様に呪文を唱えてはいなかったからだ。
「そうらしいわね、詠唱無しで魔法を使うなんて聞いた事ないけど、そんなこと今はどうだっていいわ」
コハクの言葉を聞いて、加奈がそう判断する。
どんな事があっても、目の前にある光景を見逃す気にはなれなかった。
「あの様子からして、この騒動を起こした人間側で間違いなさそうですわ、被害が大きくなる前に捕まえてしまいませんと、住民達が困りますわね」
裕司はポポに下がっている様に言う。
「危ないから、ポポちゃんは遠くにいてね」
「よく分かんないけど、うん」
事態が良く呑み込めていない様子のポポはそれでも、首を縦に振って頷いた。




