第35話 ホワイト・エール
歌を歌いながら残り少ない道のりを歩いていく。
日はまだ天高くにある。
宿をとって眠る場所を確保する前に、町の病院に寄れるかもしれないかった。
だが……。
「あれ? ねぇ、コハク、カナ、ユージ、何か見えるよ」
ポポの声に裕司達は視線を向ける。
ホワイト・エールの町がある方角からは、煙がいくつも立ち上っているのが見えた。
「何かあったのかしら、急ぐわよ」
嫌な予感にかられるままに、コハクを筆頭に町へと急いだ。
辿り着いた町の様子は悲惨な物だった。
何か大きなものが暴れ回ったように、建物は壊れていて、あちこちから火の手が上がり、道にはけが人が溢れていた。
「何よ。これ……どうなっているの?」
コハクが呆然としながら、立ち尽くしていると、近くから聞き覚えのある声がした。
「あははっ、人間もアルカミレスも皆まとめて死んじゃぇばいいんだ! ざまーみろ。あははははは」
その声は、ブルー・ミストラルで聞いた事のある狼使いの少女の名前だった。
「まさか、ジャッジメントがこの町を襲っているの! あいつら、あたし達の里を襲うだけじゃなく、この町まで。許せない!」
コハクは頭に血が上った様子で、その場から声のした方へと走って行ってしまう。
裕司達は慌てて、その背中を追いかける。
「待ってよ、コハクちゃん!」
「一人で向かっては危険ですわよ」
(あの声は聞いた事がある声だ。コハクちゃんの里を襲ったジャッジメントの人達がいる事は本当なんだろうけど、その人達はどうしてこんなひどい事ができるんだろう……)
被害を目にした裕司は尚更強く思う。
簡単に人に危害を加える者達の気持ちが分からなかった。




