第31話 アルカミレスじゃない?
夜空を眺めながら、眠気がやってくるのを待つ。
しばらくとりとめのない会話をしながら、裕司達は自分達の世界とこの世界とのギャップについて学んでいた。
ポポは眠かったのか、早々に眠りについて「くぅくぅ」と健やかな寝息を立てている。
だが、ふいにコハクがポポを見つめたきり黙ってしまった。
「おかしいわね」
コハクの怪訝そうな声に裕司が問い返す。
「どうしたの? コハクちゃん」
「この子、アルカミレスって感じがしないのよ」
「え、アルカミレスじゃないの? でも、マザー・ツリーから生まれてきたよね」
「ええ、そのはずなんだけど。魔力が体内から感じられないわ」
アルカミレスは体内にある魔力を使って魔法を行使する。
ここまでの道中で裕司達はそう教わって来た。
だが、アルカミレスであるはずの人間に魔力がないという事がどういう事なのかまでは分からなかった。
それは加奈も同じだった。
「何か問題でもありますの? ひょっとして重大な障害か何かだったりでは……」
不安そうな加奈にコハクは首を振る。
「そういうわけじゃないわ。いたって健康そのものよ。だけど……こんなの聞いた事ない。一体どうしてなの?」
否定の言葉を返す。が、やはりどういう事なのかは、コハクでもまったく見当のつかない事だったらしい。
額に手を当てて、狼狽した様子でいる。
その視線の先にいるポポは、睡魔に負けて何も知らずに眠り続けている。
コハクの思考を手助けするように、加奈が再び問いかけた。
「人間がマザー・ツリーから生まれてる可能性はないんですの? 今まで一例もほありえなかった事ですの?」
「ないわ。ゼロよ。マザー・ツリーから生まれてくるのは絶対にアルカミレス、そのはずなのに……。これはホワイト・エールに連れていった方がいいかもしれないわね」
考えをまとめる様に喋ったコハクは、裕司達にとっては初耳である町の名前を呟いた。
「それは、医療に関係した町なんですわね」
「ええ、その通りよ。ツリーが枯れけていたんだし、あたし達が知らない何かの病気かもしれない。そこで見てもらった方が良いわね」
とりあえず、次の目的地は医療の町ホワイト・エールにする事にして、不安を抱えながら裕司達は眠りについた。




