第30話 忘れないで前に進む事
援護の言葉にお礼を言いながら、遠くにあるマザー・ツリーを眺める。
ポポが生まれた後は、開かれた内部はすぐに閉じてしまい、今は以前より少しだけスマートになってそこに立っている。
「何にしても、無事に生まれて来て良かったね。あのマザー・ツリーはどうなるんだろう」
「さあ、寿命が来たらそのまま枯れるんじゃないかしら。私達には関係のない事だわ」
裕司の疑問に答えるコハクの言葉は、他人事の様に聞こえた。
加奈が咎めるように言う。
「そんな言い方は薄情ではないんですの?」
「何怒ってるのよ、普通の事でしょう。枯れた木が死ぬのは当然でしょ。前にもいったけど、必要以上に悲しむのはかえって相手へ失礼だわ。あんた達の世界がどうだったかは知らないけど、誰かが死ぬなんてこの世界ではそんなに珍しいことじゃないんだから。大切なのは忘れないでいて、前に進む事」
コハクのいる世界では、亡くなった人への感情の整理の仕方が、若干裕司達の世界とは異なるようだった。
「そう、ですわね。確かにそうですわ。失礼いたしましたわ」
「ふん、別に気にしてないわ。まあ、明日くらいは、もう一度様子を見ていって言葉をかけるくらいはするけど」
本当に気にしていないのだろう。
コハクは特に気分を害した風でもなかった。
(大切なのは、忘れないでいて前に進む事か……コハクちゃんって、僕達よりもちょっと大人なのかもしれないな)




