第27話 故郷の歌
コハクに言われた通り裕司達は、約半日かけてエネルギー・フラワーとやらを探したり乾いた木を集めて焚火をしたりした。
歌の方は、裕司も加奈も上手くはなかったが、とりあえず知っている歌を交替で歌う事にした。
裕司が地元に伝わる「ふるさと」という歌を歌っていると、コハクが物思いにふける様な顔色になった。
そして歌い終わった後にポツリと呟く。
「郷愁にふけるっていう感情は、どこの世界の人間も同じなのね。不思議な感じだわ」
コハクは歌に共感したようだった。
空を見上げれば、赤く色づいている。
もうじき日が暮れる頃合いだった。
一番星が輝き始めていた。
マザー・ツリーが心配なので今日は野宿になるだろう。
眠るときは、一応近くにある遺跡の下にいって遠くから見守る事にしているが、可能な限りは木の傍にいる事を決めていた。
「ふるさとなんて、帰る場所なんてそれぞれ皆違うのに、変ね」
目を閉じるコハクは、在りし日のブルー・ミストラルの里の様子を思い浮かべているのかもしれなかった。
歌い終わった裕司は、コハクへ声をかける。
「こんどはコハクちゃんの知ってる歌が聞きたいな」
「嫌よ。私は歌とか得意じゃないの」
「そっかぁ」
心の底から残念に思って肩を落としていると、コハクがそっぽを向きながら言葉を追加してきた。
「でも、故郷の歌の歌詞ぐらいは教えてやっても良いわ」
「えっ?」
「一曲だけよ。異世界の曲を聞かせてもらった、正当な対価よ」
頬を少しだけ染めながらそう言い切ったコハクは、さっそく知っている故郷の歌を話はじめた。
――遠く 遠く 懐かし 里の景色
――通りを行きかう人の笑顔 手を振る人の影
――浮かぶ思い出 いつまでも心と共に
裕司は懐かしい思いで、すぐに胸がいっぱいになった。
(何でこんなに悲しい気持ちになるんだろう。僕達の故郷はあるけど、コハクちゃんの故郷はもうなくなっちゃったからかな……、それともどんなに形が亡くなっちゃってそこに残らなくなっても、一番大切な景色ってきっといつまでも思い出せるって思ったから、かな……)
コハクの歌い上げる言葉の数々は、頼りなく聞こえて、夜の暗闇の中に吸い込まれていった。




