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アルカディアの魔法使い  作者: 仲仁へび
第三章

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第27話 故郷の歌



 コハクに言われた通り裕司達は、約半日かけてエネルギー・フラワーとやらを探したり乾いた木を集めて焚火をしたりした。


 歌の方は、裕司も加奈も上手くはなかったが、とりあえず知っている歌を交替で歌う事にした。


 裕司が地元に伝わる「ふるさと」という歌を歌っていると、コハクが物思いにふける様な顔色になった。


 そして歌い終わった後にポツリと呟く。


「郷愁にふけるっていう感情は、どこの世界の人間も同じなのね。不思議な感じだわ」


 コハクは歌に共感したようだった。

 空を見上げれば、赤く色づいている。

 もうじき日が暮れる頃合いだった。

 一番星が輝き始めていた。


 マザー・ツリーが心配なので今日は野宿になるだろう。


 眠るときは、一応近くにある遺跡の下にいって遠くから見守る事にしているが、可能な限りは木の傍にいる事を決めていた。


「ふるさとなんて、帰る場所なんてそれぞれ皆違うのに、変ね」


 目を閉じるコハクは、在りし日のブルー・ミストラルの里の様子を思い浮かべているのかもしれなかった。


 歌い終わった裕司は、コハクへ声をかける。


「こんどはコハクちゃんの知ってる歌が聞きたいな」

「嫌よ。私は歌とか得意じゃないの」

「そっかぁ」


 心の底から残念に思って肩を落としていると、コハクがそっぽを向きながら言葉を追加してきた。


「でも、故郷の歌の歌詞ぐらいは教えてやっても良いわ」

「えっ?」

「一曲だけよ。異世界の曲を聞かせてもらった、正当な対価よ」


 頬を少しだけ染めながらそう言い切ったコハクは、さっそく知っている故郷の歌を話はじめた。


――遠く 遠く 懐かし 里の景色


――通りを行きかう人の笑顔 手を振る人の影


――浮かぶ思い出 いつまでも心と共に


 裕司は懐かしい思いで、すぐに胸がいっぱいになった。


(何でこんなに悲しい気持ちになるんだろう。僕達の故郷はあるけど、コハクちゃんの故郷はもうなくなっちゃったからかな……、それともどんなに形が亡くなっちゃってそこに残らなくなっても、一番大切な景色ってきっといつまでも思い出せるって思ったから、かな……)


 コハクの歌い上げる言葉の数々は、頼りなく聞こえて、夜の暗闇の中に吸い込まれていった。



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