第25話 お世話
マザー・ツリーの状態を調べていたコハクが、暗い声音で喋る。
「あんまり状態が良くないみたいね。もうすぐ新しい命が生まれてくるってのに、こんなんじゃ、生まれてくる命も危ないわ。無事に誕生するならまだ良い方だけど、何かしらの障害が残るかもしれない」
今にも枯れ朽ちていきそうなその木の表面を撫でるコハクの手つきには、いたわりに満ちていた。おそらく相当な年月を生きてきたのだろう。ひょっとしたら寿命が近いのかもしれない。
その言葉に裕司は焦って驚く。
「ええ!? そんな、早く何とかしてあげないと」
「母体の状態が胎児に影響を与えるのは、どこの世界でも同じなんですわね。それで、何か改善法の当てはあるんですの?」
コハクは、腕を組みながら「そうね……」と考え込む。
「私達は専門家じゃないから、分かっている事は少ない。出来ることしか出来ないけれど、やらないよりはマシだわ。里で一度お産を手伝った事があるから、その時にやった事を教えるわ」
(木の場合でもお産って言うんだ。びっくり……。じゃなくて、驚いてる場合じゃないや。しっかりコハクちゃんの説明聞かなくちゃ)
裕司の内心に気づく事のないコハクは、順に指を立てながらよどみなく説明していく。
前に手伝った、というのは本当だったらしい。
その口調に迷いはなかった。
「まずは、水と栄養を与える事ね。水は水路から運んでくればいいから、問題なのは栄養よ。黄色くて丸い花が付く植物が生えていたら見つけたら持ってきて、それはエネルギー・フラワーといって、たくさん栄養が含まれている植物だから」
「うん」
「分かりましたわ」
「後は、夜になったら寒くなると思うから焚火をする為に、乾いた木材を持ってきて。お産の前にツリーを冷やすのはよくないわ。本当は布とかでくるむのがいいんだけど、無いから仕方がないわね」
「うん、見つけたら、持ってくるよ」
「木材ですわね」
「最後に……」




