第24話 マザー・ツリー
加奈の言葉にコハクは、目の前の木の肌をそっと撫でながら説明していく。
「この木はマザー・ツリー。私達アルカミレスにとっては母なる木よ。アルカミレスは人間と違って、各地にあるこういう木から生まれてくるの」
(え、木から生まれてくるの? じゃあ、コハクちゃんも?)
人間とまるで変わらない姿のアルカミレスであるコハクの姿を見て、裕司は驚いてていた。
その思いは加奈も同じだったようだ。
大きく開けた口に手を添えるようにして、驚きながら聞き返している。
「それは、本当ですの?」
「ええ、こんな所で嘘をつく意味ないでしょう」
「確かにそうですけれど」
「アルカミレスは、各地にあるマザー・ツリーから生まれてくる。この世界では皆知ってる事。大抵の木は町や里の近くにあるからいいんだけど、たまにこうやって人里から離れた所にも存在してるから、定期的に気にかけてあげなくちゃいけないのよ」
「そうだったんですのね。意外ですわ」
「何がよ」
加奈の言葉に憮然とした様子で、聞き返すコハク。
裕司が補足する様に言った。
「正直に言えばコハクちゃんは、復讐の事だけ考えてると思ってたんだ。ごめんね。他の人の事考えてあげてたなんて知らなかったよ。コハクちゃんは優しいんだね」
「な、ば、馬鹿な事言わないで。今は我が儘とか言ってる場合じゃないでしょ。命が優先されるのは当たり前の事だわ」
真っ赤になったコハクは、早口で一気に喋ってからぷいっとそっぽを向き、木の様子を調べる事に集中してしまう。
その背中を見て、加奈が言葉をこぼした。
「コハク、自分がしてる事が我が儘だって自覚はあるみたいですわね」
「おばさんもおじさんも心配してたもんね」
(負い目みたいなものが、コハクちゃんにもあるのかもしれないな。大切な人達に心配かけてまで、復讐の旅をしている事に対しての。僕達は本当はそれを止めなくちゃいけないんだけど……、言っても今のコハクちゃんじゃ聞いてくれなさそう)




