第21話 プレゼント
いつの間にか、ハイドウルフをけしかけた人間の気配はなくなっていた。
声も聞こえない。
裕司はほっとするのだが、
「何よ、つまんないわね。威勢だけ良いんじゃない。私一人でも余裕だったわ」
復讐を果たせなかったコハクは、不満そうだった。
うでわ探しを再開する。
大きな木の下で、太陽の沈む方向を重点的に捜せば、ほどなくしてそれが見つかった。
土を掘り返した地面の中に、埋まっていた小さな箱。
その中にはシルバーの腕輪と手紙が入っていた。
「コハクへ、
大魔導士になる夢を持ってるあなたの為に、魔力の上がるうでわをゲットしました。
良かったら大切に使ってね。
あと、ちゃんと手伝ってくれた子にはお礼を言う事。
貴方のかけがえのない親友 リィンより」
コハクは丁寧な手つきで手紙をしまって腕輪をはめた。
「何よ、お節介」
手紙に向かって文句を言うものの、そこにいつものような威勢のよさはない。
そして、コハクはすぐにそこから背を向けて、その場を後にする。
「用事は終わったわ、行くわよ」
「え、もう良いの? えっと他にやる事とかは……?」
例えばお墓参りなどはしなくて良いのだろうか、とそう裕司は告げるのだが、コハクは頭を横に振った。
「死者を悼むのは、生きてる人間が心に整理をつける為でしょう。悲しむのも過去を回想するのもとっくに終えたわ。いつまでもそんな事にこだわってたって、リィンの為にもならない。だったらやるべき事をやった方が良いに決まってるわ」
現実的な考えを述べるコハクだったが、その表情は少しだけ固かった。
裕司は次にここに来る機会がいつになるのか、考えながら言葉をかけた。
「じゃあ、今度ここに来たら。綺麗なお花とか持ってきたいね」
「呆れた。そうする前に自分達が帰る方が先でしょ? 思ったより、お人よしなのね」
加奈は裕司の言葉に同意する様にそんなコハクへと告げる。
「それが裕司様ですもの。顔も知らない私達が悼んではいけませんの?」
「そいうわけじゃない」
「なら、私も機会があったら付き合わせていただきますわね」
「ほんっと物好き」
呆れたと言う風でも、コハクの表情は先程より少しだけ明るかった。




