第17話 ブルー・ミストラル
湖の中を進んで数分。
辿り着いたのは、焼きつくされた里の景色だった。
「ここがコハクちゃんの故郷」
生きている者の姿はない。
犬や猫などの動いている生物の姿もどこにもなかった。
目の前の景色に裕司が絶句していると、顔を俯かせてコハクが拳を握りしめた。
「あいつ等が襲って来たのは、夜よ。それで……子供も老人も皆、里の人間は全てやられてしまったわ。生き残ったのは私一人だけ。こんな事、許されない事だわ」
コハクの拳は、抑えきれない怒りの感情で震えている。
「行くわよ」
「どこへですの?」
コハクの当然の様な問いかけに、加奈が首を傾げる。
「埋められた腕輪を探しに行くのよ。私の親友が、サプライズでこの里のどこかに埋めたはずなんだけど、場所を詳しく私に教える前に……、死んじゃったのよ」
「それは見つけなけばいけませんわね」
最後の瞬間にコハクとその人が何かやり取りを交わしたのか、そもそも近くにいたのかは分からないが、そういう事なら裕司達が協力するしかなかった。
見当を付ける為に、加奈は疑問をぶつけていく。
「場所の心当たりはありまして?」
「あの子から聞いていた事は、確か大きな木の近くに埋め立てたって言ってたわ。あとは太陽が沈む方角がヒントだって」
「大きな木、そして太陽……西ですのね」
里の景色を見まわしてみる。
大きな木はあった。
この世界でも太陽は東から昇り、西に沈むので木の西側に埋められているのかもしれない。
「あそこにあるのかな」
「たぶんね。とりあえず、あの木の近くって事は分かってるんだから、ちゃっちゃと向かいましょう」