第14話 友達でいてやって
早朝の時間だからか、道を歩く人の影はまばらだった。
裕司達が家の前に立つとラシェータとナジェルに心配そうな顔をされる。
「コハクちゃんも貴方達も、どうか気を付けてね」
「何かあったら、遠慮なくわし等に言うのだぞ」
「分かってるわ。ありがとう、二人共」
その言葉を受け取るコハクは、素直に頷いて二人と順に抱擁を交わしていった。
そして、ラシェータは裕司や加奈にも声をかけていく。
「貴方達も、大変だろうけど。しっかりね」
「は、はい」
「ええ、分かりましたわ」
「コハクはちょっと気の強い所があるけれど、優しい心だからどうか友達でいてやってね。あれで寂しがり屋なのよ。召喚獣じゃなくてお喋りができる人間が来てしまったという事は、そんなあの子の心の表れだと思ってるわ。見放さないでいてやってね」
そこまで言ったところで、顔を赤くしたコハクが割り込んでくる。
「な、なに言ってるのよ、ラシェータおばさん。そんなわけないじゃない。私が寂しいとかありえないわ。これまでだって一人でやってきたんだから、ずっとこれからも一人でも平気よ」
「あらあら」
だが、そんな風に詰め寄るコハクに対してラシェータは大人の余裕であしらうのみだった。
「もう別れの挨拶は済んだんだから、さっさと行きましょう。時間がおしいわ」
怒った態度で歩き出すコハク。
それを慌てて裕司達が追いかけていく。
「あ、待ってよコハクちゃん」
「まったく、あまり先に行かれると困りますわ。私達には土地感がないんですのよ」