第12話 初めての夜
この世界に来てからの初めての夜が来た。
おばさん達に用意してもらった、しばらく使われてなかったという客人用の部屋のベッドで、裕司達は横になる。
(だけど、眠れないよ)
しかし、目は冴えていて、中々眠りにつけない。
裕司は窓の外へと視線を向ける。
そこには夜闇に月が二つ浮かんでいて、元の世界とは明らかに違うであろう事を、これ以上ないほど雄弁に語っていた。
(コハクちゃんは強いなぁ、僕だったら挫けちゃってるだろうな。復讐なんて良くないと思うけど。その強さには憧れちゃうよ。僕は男の子なのに、弱虫だし)
裕司には、コハクの辛い境遇でもへこたれないその姿が眩しく見えていた。
「裕司様、眠れませんの?」
考え事をしていた裕司は、隣のベッドで眠っていた加奈に声をかけられた。
「うん。これからどうなるのかなって」
「きっと大丈夫ですわ。私には裕司様がついてますし、裕司様には私がついていますもの」
「加奈ちゃんは強いね」
「そんな事ありませんわ。私が強く見えるというのなら、それは裕司様のおかげですもの。なぜなら、ここぞという時の裕司様はとっても格好良くて、とっても素敵だからですわ? 裕司様は確かにちょっと臆病かもしれませんけれど、弱虫などではありませんの。だから大丈夫ですわ」
「ありがとう、加奈ちゃん」