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4話 とどめはしっかり刺しましょう

ようやくここまで来れました。

「まず、俺の今の生活ですが、精霊がいる土地で暮らしています。世界で一番豊かな実りがあり、安全な場所だ。俺が今日まで生きてこれたのもその恵みのおかげだ。だから、俺は王位も国も金も要らない。全てそこで満足しているからな」

 それを言うと、皆の目が飛び出そうなほど驚いていた。そりゃそうか。誰が追放した後そんな安住の地にたどり着けるかなんて思えるか。

「じゃあ女はどうか。これもいらない。別に一人というわけではないからな。まあここにいるから紹介するが、彼女たちが俺と一緒にいてくれる」

 そう言って横に退くと、魔法を解除したエスト、エリス、エリカの三人が現れる。

「お久しぶり、王様。『元』聖女のエストです」

「『元』聖騎士のエリスです」

「『元』魔導士のエリカ・・・」

 なんかみんな、やけに元を強調してくるね。

「彼女たちがいる以上、俺はこれ以上の女は求めない。まあ求めるとエストがうるさいのもあるけども」

 とか言うと、エストが余計な事言わないの!と頭をはたいてくる。

「それに、彼女たちだけではなく、フェンリルのリルや九尾の狐の楓が一緒に暮らしてくれています。であれば、寂しいこともこれ以上誰かを入れたいとも思わない」

 あともう一つ言っておこう。

「それから今回の天啓ですが、別に魔王討伐を目的に出されたものではないそうですよ?」

 俺がそう言いながら天井を見ると、ふわふわと浮かびながらこの謁見を見ていた女神が姿を現して降りてくる。

「もう、君ったら。私がいるってことわざわざ言わなくてもいいのに」

 そう言って床に足をつくと、王をはじめ俺たち以外がひれ伏す。・・・女神ってホント敬われてるんだなぁ。俺たちからすると、飯たかりに来るお姉さんなんだけどな・・・。

「女神様、その、魔王討伐ではないというのは・・・」

 王が口を開く。すると、王のほうを向いた女神が言う。

「その通りですよ、王。今回の魔王は討伐する必要もないでしょう。今も仲良くコカゲたちとやっていますしね。それどころか、私は人間こそ滅ぶべきと思っています」

 そう女神が言い切ると、間がざわつく。そりゃそうだ。信仰の対象から滅べなんて言われてもね。

「それはどういう・・・」

「私は天よりすべてを見てきましたが、あなたたち権力を握ったもの達の腐敗が酷いと思います。人間種以外の迫害や隷属に始まり、さらには国益のため、コカゲより婚約者を奪おうとし、挙句の果てには追放。それにほかの国も従ったのを見て、思いました。私はそのようなかわいそうな人を出すために勇者を送ったのではないと。であれば、一度人類を滅ぼし、また新たな人類を繁栄させようと思います」

 そういう女神に誰も何も言い返せていない。

「故に、魔王と争う理由を持たないコカゲを勇者としました。同時にエスト、エリス、エリカを聖女、聖騎士、魔導士とする天啓を出したのですが・・・面子のためとはいえ違う人を聖女、聖騎士、魔導士とするとは。それにその人たち、魔法で洗脳し、コカゲが何を求めても従うようにしていますね」

 え、うそん。そんなことやってたの? ぱっと見は普通に見えるんだけど、女神様の目はごまかせない、かな?

「私が言えることはこれだけです。ではコカゲ、帰りましょうか」

 これ以上言うことはないと暗に言い切った女神。王国の面々はもう何も言おうとしない。他国の使者も、ただうつむくばかりだ。俺がそれに頷いて帰ろうとしたら、ある人に呼び止められた。

「待ってください」

「エル・・・」

 王女のエルだった。

「最後に、彼女たちと話しても、いいですか?」

「まあそれくらいなら?」

 エストたちを見ると、頷いていたのを見て、承諾する。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 そのあと、謁見の間の控室に入った俺たちは、エル直々に入れたお茶を飲んで歓談した。エルなら何も入れないって信頼があるからね

「あの時、私もついていけばよかったかもしれませんね」

 そしてエルからそんな悔やみが出る。

「エルも私たちと来たかったの?」

「ええ、それはもう。私もコカゲさんのこと、好きですから。今でも」

 え、俺、王女になんかしたっけ?

 なんで好かれているのかわからず首をかしげると、エルがコロコロと笑う。

「まあ覚えていないでしょうね。私が外にお忍びで出ていた時、暴漢に襲われて逃げて居て、その時に助けてくれたのがあなたでした」

 ああ、確かに誰かを助けたような記憶があるけど、あれがエルだったとは。

「私は顔を覚えていたので、お披露目の時にあなただと気づきましたよ? それでこれならあなたと結ばれると思っていたら、あんなことになって・・・」

 遠い目をするエル。

「まあ幸いなのは、マコトが大量の女を作るので、私の純潔は捧げなくても何とかなったことでしょうか」

「え、エル、まだ処女なの!?」

 それに驚く俺たち。ちなみに直接言ったのはエスト。さすがにそれを言えるほどデリカシーがない俺じゃない。

「ええ、うまく隠していました。お父様に言った私の子供も、マコトがヤリ捨てて孕ませたメイドの子供ですし」

 なんというか、よくごまかせたなと思う。

「まあこんな年の逝った女なんてあなたは求めないでしょうし、このまま国と共に滅びようかと思うのですが・・・。こんな結末になるのなら、と思わなくはないですね。だから、こうして最後の歓談をお願いしたのですけども」

 寂しそうに笑うエル。さすがにこれでは忍びないと思う俺たちはアイコンタクトで会議し、あることを決める。

「エル、よかったら俺たちと来ない?」

 きょとんとするエル。

「え、でも、こんな年増・・・」

「まあそこはどうとでもできるから?」

 実際、俺たちが年を取らないのも、女神がごにょごにょしてくれたからだ。だからエルもお願いすれば、きっと。

「エルもここまで頑張って来たんなら、夢がかなうくらいのご褒美はあってもいいと思うよ?」

 そうして俺が差し出した手を、エルは・・・。

次で最終回です。

エルはコカゲの手を取るのか・・・

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