2話 王国行くのめんどくさいよぉねえこれ無視しちゃダメ?
2話です。
特に国王と宰相のやり取りを書いているのが一番楽しかったです。
あれから何年たっただろう。
王国を追放された俺と、それについてきた元聖女エスト、元聖騎士エリス、元魔導士エリカ。なんで元がつくかというと、あのあと三人共魔王討伐から逃げ出したとして、エリスは王国から、エストは教会から、エリカは魔道国からそれぞれの資格を剥奪されたらしい。らしいというのは、風のうわさで聞いただけなんだけども。あと、なんでかは知らないけど、俺は実家から勘当されたらしい。どうやら、誰かが聖女、聖騎士、魔導士を王国から出るときに連れ去ったという噂が流れたようで、そんなことをするのはうちの子ではないとかなんとかなったとか。
王国を出てしばらく。辺境の地の果ての方。そこに長い時間をかけ俺たちはたどり着き、そこでのスローライフを送っている。自然は豊かで海も近く、日々の食料は森からとってきたり狩りしたり、開拓した田畑からとったり、海に出て取ってきたりとメニューには飽きない生活を送っている。広い家も作った。
更にいいことに、この辺りには精霊も多くいるようで、魔法を使ったり物を作るときなんか、さまざま手を貸してくれる。お返しにお菓子をあげたりして仲良く暮らせている。
更に更にうれしいことに、動物が多く生息しているようで、いろんな動物がウチに遊びに来る。中には伝説の動物もいるようで、フェンリル、九尾の狐、ドラゴン、人魚、雪女etcetc。特にフェンリルと狐(それぞれリルと楓と名付けた)の二人に関しては、他の動物たちがたまに寄るだけなのに、家の中に定住しやがった。お返しにうちのメンバーみんなでよくもふもふさせてもらっているからギブ&テイクなのかもしれないけども。
まあこんな感じにゆるーく生活していた。精霊が何かしているのか、みんな年を取ることもなく、のーんびりと。
いつまでもこうやってゆっくり生活するもんだと思っていたが、ある時、ある使者が来たことで、いったん中断することになった。
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Side コカゲ
「どうか、どうか王国へと戻ってきてください!!!」
そう言って土下座をする王国からの使者。
何があったかというと、あれからもう20年たっていたようで、その間に勇者は新たにつけられた聖女、聖騎士、魔導士と共に魔王討伐を目指して完遂。その後王女や新勇者パーティーの面々と結婚。それ以外にもメイドなんかに手を出してハーレム生活を送っていたらしいが、その後新たな魔王が出現。また討伐に向かうも、一切の手が出ず、あっさりと負けて逃げ帰ってきた。
そして女神様からの天啓でマコトに変わる新たな勇者がいると示されたが、それが俺なんだとか。
ちらっと後ろを見てテーブルで優雅にお茶を飲んでる美女を見ると、いたずらそうにウインクしてくる。
「いきなりそんなことを言われても・・・。それに、以前王国にどのような仕打ちをされたかはご存じのはずです」
どうにも拒絶することもできないが、かといって言われた通り帰る気もない。ぶっちゃけここでの生活が気持ちよすぎるのだ。わざわざその生活を捨ててあくせく働かないと生活できない王都に戻りたいかと聞かれればNOだろう。
「そこをなんとか!! 今や王国は存亡の危機なのです!!」
あんなことする王国なんか滅んでもいいんだけどなぁ・・・。というのが正直なとこ。
ううむ、しかし・・・。この使者、俺が頷くまで帰らないだろうなぁ。
そのあとしばらく問答をして、少し考える時間をくれということで、一週間後にまた来ることになった。
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「で。どういうことですか」
と、使者が帰った後、ずーっとテーブルで紅茶を飲んでる美女、女神に問いかけた。女神からの天啓ということは、この人が何か言ったってことだから。
「だって、このほうが面白そうだったから」
口をとがらせつつ、弁解する女神。いや、面白そうだからって・・・。
「それに、あの国は君のこと追い出したんだし、これくらいの意趣返しやってもいいじゃん」
とはいってもなぁ・・・。ここから出る気ないし・・・。
「まあ、別に放置してもいいのではないか? 妾は主らに敵対する気などなければ、この空間を壊す気もないのだから」
そういうのは女神の反対側でマフィンをはむはむしているロリ美少女、魔王だ。
なんで魔王がこんなとこにいるかって、散歩に来たら偶然この場所を見つけたとかなんとかで、おやつをあげたら懐かれた。それ以降時たま遊びに来ている。ちなみに、なんで魔王がいても使者が驚かないかというと、女神も魔王も魔法で誰もそこにいないように偽装していたからだ。
「でも、女神が俺を勇者にしたってことは、これを倒せってことなんでしょ?」
「妾を指さすでないわ!!」
魔王を指さしながら女神に言うと、魔王が俺の指をぺちっと手で払ってくる。
「んーん、別に倒してほしいわけじゃないのよ? というか、君が勇者になれば、魔王と殺しあうこともないだろうなぁと思ってるくらいだし。別に意趣返しだけじゃないのよ?」
というか、一度人類はほろんだほうがいいとかぶつぶつ言ってる女神。
ほんと、この場所が滅ぼされることもないし、他の人間のことなど知ったことではないし、無視しててもいいんだけど・・・。あの使者、それを言ったところで帰らないと思うんだよね・・・。
どうしようかと悩んでいると、今日のご飯を確保していたエスト以下3名が帰ってきたので、みんなで色々話し合い、結局王国に行くことになった。
いやほんと面倒くさい。
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Side国王
全く、なんでこんなことになってしまったのか。今まではすべてがうまく回っていた。勇者を優遇し、勇者に娘を与えて王位につけ、元々魔王がいた土地を開発し。全て王国の利益になるように回ってきた。
しかし、新たな魔王が現れた。その魔王に引きつられた魔王軍に対して、勇者マコトは一切手が出ず、帰ってくる羽目になってしまった。それであれば新しい勇者を担ぎ上げればいいのだが・・・。まさか次の勇者と天啓が出たのがコカゲだとは・・・。
「あの時コカゲを追放としたのは失策でしたな・・・」
宰相が天井を仰ぎながらそうつぶやく。私も宰相もそれでいいとした。どうせ追放したところで王国への損害などない。そう思った故の行動だったが、まさかこんなことで裏目に出るとはな。
「宰相よ、この場合、コカゲをこちらに引き込めなかった場合、王国は終わると思っていいな?」
「ええ、間違いなく。勇者を除く戦力では勝つことはできず、一方的に押し込まれて終わるでしょう」
ということは、何をしてでもコカゲに勇者として戦ってもらうしかないということか。
「使者から聞いた様子では、豊かな土地に一人で暮らしているそうであったな」
「ええ、ですな。であれば、女、金、地位、それらで引き留めることが可能でしょう。仮にマコトの処刑などを条件と出されたとしても、今更使えない勇者など切り捨てても問題ないかと」
だが、二つだけどうしようもない問題がある。地位として王位を望んできた場合と女を望んできた場合だ。
「宰相、仮にコカゲが王位を望んだとして、現状取れる方法はエルをコカゲの伴侶とする手だけか」
「ですな。まさか、エル女王が息子しか生まないとはな・・・」
王としてのこの血を絶やさぬようにしなければならない以上、私の血縁の誰かを伴侶に迎えさせなければならないが、私の娘はエルのみ。既に私の妻は子供が埋めるような年齢ではなく、エルの娘もいないのであれば、結婚できるのはエルのみ。しかし・・・。
「果たして、自分を追放したマコトのお手付きになったエルをコカゲが受け入れるかの・・・」
仮に受け入れないといった場合、エルに誰かと番って娘を生んでもらうしかないが、エルもなんだかんだ年齢を重ねている。そろそろ産めなくなってもおかしくないし、まず女を産めるかどうか。
「まあ、仮にエルに娘がいたとして、マコトの血が入った娘を嫁にするかはわからんか」
「ですなぁ。しかし、今はあれこれ考えていても始まりませぬ。であれば、コカゲと話しながらすり合わせていくしかないでしょう」
「であるな。なんとしても、彼の者を勇者とせねばな・・・。そのためには過去の謝罪、賠償で納得させ、マコトより多くの報酬を与えねば、か。ほんと面倒なことをしてくれた、マコトは」
「ですな。これでハーレムなど望まれたとしたら、それこそ面倒になりましょう」
王城のほぼすべてのメイドに手を出していたマコト以上の女とされると、まず無理だ。見目麗しいものをえりすぐって王城にメイドとして迎えている以上、まず同数集めるのは困難を極めるうえ、引継ぎも必要だ。だからと言って、マコトが手を付けた女を与えるとしたら、マコトよりも下に見ていると取られてもおかしくない。マコトが娶った聖女たちももう年も取り、当時の美貌も薄れてきている。そんなのをハーレムに加えたとて、喜ぶ男はほぼいないだろうし、もし嫁にするとしても、どこかの貴族の未亡人の方がまだいいだろう。
「ところで、新たな聖女、聖騎士、魔導士は見つかったのか?」
話を変えようと、同時に女神から天啓が来た勇者パーティーの面々について話すことにする。
「いえ、女神様の天啓では、当時コカゲを追放したと同時期に姿をくらました3人ですが、未だ足取りはつかめずでして。しかし、それでは済まないので、実力のあるものをパーティーメンバーとして招集いたしました。ええ、どれも皆美少女でありますな。しかし美しさで行けば、コカゲと共に旅をしたもの達の方が上でしょう」
「そうか。なんとか面子は保てそうであるな。しかし、彼女らもどこに行ってしまったのか」
既に元聖女、元聖騎士、元魔導士となったあの三人であるが、新たな天啓で再度聖女、聖騎士、魔導士であると伝えられたため、既に称号を復帰させたが、コカゲと同時に行方不明となってしまっていていまだどこを探してもいない。それでは格好がつかないどころか、マコトの時はメンバーをつけたのに今度は一人で行かせるなど王国の沽券にもかかわる故、なんとか代役を用意させたが。正式な聖女たちでない以上、どこまでやれるか。
「その者たちの性格は?」
「もちろん従順に。これでコカゲの機嫌を損ねられてはたまらないですからな。どのような要望にも応えるでしょう」
それであれば、何とかなるか?
「いっそのこと、勇者ということを広めて既成事実も作るべきか?」
「コカゲの機嫌を損ないかねませんが、なりふり構ってられる状態でもないですな」
とにかくなんとしてもコカゲを勇者としなくては。それだけを第一に、宰相や相談役と共に策を練っていくことにした。
コカゲと王国のやり取りは次話になりました()