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冒険者ギルドのチート経営改革 魔神に育てられた事務青年、無自覚支援で大繁盛(書籍化&コミカライズ作)  作者: ハーーナ殿下
第2章

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第67話:新人職員と客のトラブル

 師匠ララエルがボロン冒険者ギルドで働き始めてから数日が経つ。

 師匠は今のところ順調にギルドに馴染んでいた。


「ふむ、依頼を探しておるのか、キサマは? それならこちらの掲示板を探すがよい!」


 今も新規冒険者に対して、ギルド内の案内をしている。

 掃除や家事などは壊滅的だが、試してみ結果、接客などは比較的にマシな方だった。そのため受付補助として客の対応にも挑戦してもらうことにしたのだ。


「ふむ? オススメの依頼が知りたいじゃと? 馬鹿者! そんなものは(わらわ)に聞かれて困る。自分で探すのじゃ!」


 だが接客に関しては、まだ危なかっかしい部分も多い。この分だとオレやマリーのサポートもしばらく必要だろう。


「すみません、オーナー。師匠の敬語や接客が、あまり上達しないで」

「いえいえ、気にしないでください。フィンさん。知ってのとおり冒険者は、あまり敬語とか気にしない人たちばかりなので」

「たしかにそうでしたね」


 冒険者というのは基本的に、上下関係や敬語を気にしない性格が多い。

 彼らは農村部や郊外から一攫千金を夢見て、出稼ぎしてきた者たち。そのため冒険者自信が敬語や礼儀作法を使えない。

 そのため師匠のタメ口に近い接客に対して、彼らも不快感を抱いていないのだ。


「あとララエルさんの場合は、普通の人には若い女性に見えているから、男性客は気にしていないのかも。まぁ、本当は『角の生えている銀髪褐色の六歳くらいの幼女』の姿なんだけど……はぁ……」


 マリーは何やらため息をついているが、師匠の見た目は普通の人には看破はできない。

 師匠が発動している生活魔法によって、一般の人には『銀髪褐色の若めの女性』にしか見えないのだ。


 唯一の例外は長い間、一緒に暮らしていたオレ。

 あとは何故かマリーにも師匠の認識阻害が通じていない。理由は不明だが、何か相性的なものがあるのかもしれない。


「ん? この気配は……」


 そんな時だった。店の中に“何かの術”が発動する気配がある。


 シュワ――――ン!


 次の瞬間、ギルド中に謎の光が発生する。

 これは……《転移の術》の一種だ。


「オッホホホ! 今日も相変わらず素敵ね、“我が愛しのフィン”!」


 甲高い笑い声と共に転移してきたのは一人の女性。怪しげなローブをまとった二十代前半の妖艶な女性だ。


「エレーナさん、おはようございます。お褒めの言葉ありがとうございます。あと申し訳ありませんが、前に言ったとおり転移魔法は店内では控えてください」


 この女性は冒険者の女魔術エレーナ。転移魔法を使うことができるが、他の客にはあまり影響は良くないのだ。

 ん? ちょうど今も店内にいた冒険者たちが、彼女の登場にざわつきはじめる。


「お、おい、あの女魔術師は⁉」

「ああ、間違いない……《大賢者》“あの”《大賢者》エレーナ=アバロンだぞ……」

「このギルドに移籍していた噂は聞いていたけど、本物は初めて見たぞ……」

「あの、黒髪の事務員に手籠めにさえている噂は本当だったのか……」

「いや、それはあくまでも噂らしいぞ。本当は……」


 今日もエレーナの姿を見て、冒険者たちはざわついている。

 どうしても彼女の姿は一般的な冒険者とは違い、かなり肌の露出が多い。そのため注目を浴びやすいのだろう。


 だが冒険者の格好は個人の自由。職員としては口を出す問題ではないのだ。


「ところでエレーナさん。今日はどのようなごようですか?」

「オッホホホ……冒険者がギルドに来る用事といったら、フィンの顔を見に来る以外はなくてよ?」


「そうですか。いつも心遣いありがとうございます。ですがここは冒険者ギルド。よかったらエレーナさんにオススメの依頼があるので、確認してください」


 エレーナは何故かオレに対して、男性としてのお世辞を言ってくる。

 だが冒険者が社交辞令を言ってくることも珍しくない。オレは浮かれることなく職員としての職務を全うする。


「まったく流石のフィンは一筋縄ではいかないわね。それじゃ仕方がないから。掲示板を……あら? 新しい職員の子が入ったのね?」


 エレーナの視線が一人の新人スタッフ……店内をうろついていた師匠に止まる。


「ん? でも変ね……一見すると『銀髪褐色の若めの女性』にしか見えないけど、なにか違和感があるわ? 普通の認識阻害の術とも違うような。これは……」


 エレーナは普通の魔術師だが、もしかしたら勘が良い方なのかもしれない。姿を変えている師匠に対して、疑問の視線をぶつけている。


「おや? この視線は……ほほう、キサマか女魔術師よ。(わらわ)に違和感を持つとは、人族にしては中々の魔力と才能の持ち主じゃのう。フィンよ、こやつはオヌシのしもべか?」


 エレーナの強い視線に師匠も気がつく。不敵な笑みを浮かべながら腕組みをしながら睨み返す。


「なんですって⁉ “我が愛しのフィン”に向かってなんたる無礼なことを⁉」


 原因は不明だが、二人は突然にらみ合う。両者の間に常人には見えない火花が立ち始める。


「えっ⁉ ちょ、ちょっと、なにこの熱い火花は⁉ 規格外のフィンさんの師匠のララエルさんと、《大賢者》のエレーナさんがいつの間にか一触即発の状態になっている⁉」


 唯一、店内で気が付いのは通りかかったリー。にらみ合い両者の顔を見ながら、大きく慌てている。


 何しろ客であるエレーナに対して、新人職員の師匠が啖呵を切っているのだ。オーナーとしてこれ以上のギルドの質を落とすことはないのだ。


「フィ、フィンさん、なんとか止めてください。このままじゃウチのギルドが壊れて……いえ、下手したら王都が戦火に飲まれてしまいそうです⁉」


「王都ですか。そこまで大げさなことにはならないと思いますが、分かりました。責任を持って収めてきます」


 新人職員である師匠を教育するのは、関係者であるオレの責務。


「師匠、そこまです。子どもの喧嘩じゃないので、お客様を睨むのは止めてください」

「ふむ。ちょうど盛り上がっているところに水を差すではないぞ、フィン。礼儀知らずの人族の女子には教育が必要じゃからのう」


「えっ……師匠……“我が愛しのフィン”が師匠と呼ぶ人?」


 オレたちの会話を聞いて、エレーナの顔がピクリと動く。何やら衝撃を受けているようだ。

 どうやら師匠という単語に反応。一応は説明をしておくことにする。


「はい、エレーナさんそうです。オレの師匠であり、一応は育ての親でもあります。今はわけあって働き始めましたが、この度は迷惑をかけて本当に申し訳ありません」


 頭を深く下げてエレーナに謝罪する。一緒に師匠の頭も下げさせる。これでエレーナも溜飲を下げてくれたらいいのだが。


「えっ……師匠……フィンの育ての親⁉」


 だがエレーナの様子は何やらおかしい。興奮が収まるどころか、先ほど以上に鼻息が荒くなっていく。


「と、ということは……この女性はフィンの母親……お母様ということ⁉」


「うむ、そうじゃ。人族の女魔術師よ。(わらわ)はフィンの唯一無二の親にして、この者をここまで女で一つ育てあげた、最愛なる母親ララエルじゃ!」


 エレーナの言葉を聞いて、急に師匠はドヤ顔になる。腰に手を当てて、自信満々に自己紹介をする。


 いや……たしかに拾ってもらった恩はあるが、ここまで育ったのはオレ自身の生活力も方が大きいのだが。

 だが今は話を壊さないように、そのことは突っ込まない方がいいだろう。


「フィンの母親ララエル……様⁉ わ、私はエレーナ=アバロンと申します! “お母様”とお呼びしてもよろしいですか、ララエル様⁉」


「ほほう、愚かな人族の中では、なかなか身分をわきまえた奴じゃのう、キサマは? 苦しゅうない。“お母様”と呼ぶのを許してしんぜよう、エレーナ=アバロンとやら!」


「はい、ありがとうございます! フィンの隣に立てるような、立派な女性……お嫁さんになれるように、これからますます精進してまいります!」


 何やら師匠とエレーナは興奮しながら、会話が噛み合っていそうで、噛み合っていない。だが両者とも盛り上がっていた。


 ふう……。

 これでなんとかお客様であるエレーナの気分を害することも回避。

 とりあえずはひと段落いったところだ。


 だが師匠は今後も何かと事件を起こしそうな予感がする。


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― 新着の感想 ―
[一言] 本来の「コンプティーク」は「パソコン雑誌」の筈なんだよ・・・。 今は見る影も無いけど・・・。
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