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異世界転生  作者: 未熟なトマト
1/1

終わり




目を覚ますと俺の部屋は暗闇に包まれていた。


「もう23時か、そろそろ母さんが帰ってくる時間か...はぁ..」


どうして俺がため息を吐いたというと、俺の母さんは毎週仕事の休みの日は彼氏の家に行っているのだ。それだけなら良い、が。



「たっだいまァーー!」


玄関の扉を開ける音と共に酔っぱらいの声がした。


「母さん、またそんなになるまで飲んだの?」


「うっるさいわね~!あんた久しぶりに見たけど、あの糞男にますます目が似てきたわね!吐き気がする」


「吐き気がするのは酔ってるからじゃないの?」


「違うわよ!あんたを見ると気持ち悪くなるの!ほんと生んだのを後悔してるから」


いつからだろう、母さんが俺の事をこんなにも殺気が込もった目を向けてきたのは。


「あんたまた学校休んだの?」


「・・・」


「ずる休みなんかしないでよね、あんた近所でなんて言われてるか知ってる?引きこもりで頭が悪いダメ息子って言われてるのよ!笑っちゃうわ!アハハ!」


そう俺は今年で18歳の引きこもりだ、だが決してずる休みで引き込もってなどない。


「もう寝た方が良いよ、あと明日はちゃんと行くよ..」


「ふん、どうだかね~。まぁさっさと高校卒業してよね!そしたらあんたを追い出して彼氏と住むんだから」


「うん...」



__________________________________


夢を見た。昔の夢だ。まだ母さんが優しくて父さんと妹の夏蓮(かれん)が居た頃の。


「お兄ちゃん、み~つけた!」


「む~!夏蓮は隠れんぼ強い!」


僕は今夏蓮と父さんの三人で近所の公園に隠れんぼをしに来ていた。


「へっへぇー!お兄ちゃんいつも同じ所に隠れるんだもん!」


そういって夏蓮は嬉しそうに笑っていた。


「でもまだ父さんがいるからね!もう暗くなってきてるから、そろそろおしまいだよ!」


「かれんが直ぐに見つけるもん~」


「夏蓮は見つけるの得意だもんね!、僕は一回お家に戻って飲み物取ってくるね!」


「うん!また後でね!」


それが夏蓮から聞いた最後の言葉だった。


〈一時間後〉


子供に大人気のテレビアニメ、ヒーローナンジャーマンを見てて戻るのが遅れてしまった。隠れんぼはとっくに終わっただろう。


「夏蓮~!父さん~!もう帰るよぉー!」


夏蓮と父さんを家に連れ戻す為に俺は大きく呼び叫んだ。だが辺りから帰ってくる声はない。


「あれ?もう帰っちゃったのかな?僕もか~えろっと!」


入れ違いになったのかもしれないので帰ることにした。

すると家には父さんと母さんがいた


「父さ~ん!夏蓮は?」


「一緒に帰ってきたんじゃないのか?」


「?」


「僕は喉が乾いたから家に一回戻ったんだよ!」


「なに?それから公園にはまた戻ったのか?」


「うん、父さんと夏蓮を迎えに行ったんだけど、誰もいなかったから帰ってきたんだよ」


そういうと父さんの顔はみるみるうちに青くなっていった。


「ちょっと夏蓮を探してくるからお前は母さんと一緒に家で待ってろ!」


それだけ言って父さんは家を飛び出していった。

父さんには家で待ってろと言われたが嫌な予感がする、僕も夏蓮を探しにいかないと!


公園に戻ってきたがやはり夏蓮の姿はない。公園の周りを探していると遠くから救急車の音が耳に入った。

さっきの嫌な予感が脳に過った。


「ま、まさか違うよね...」


一応確認の為だ!夏蓮じゃないだろうけど見に行ってみよう


救急車の前に着くとそこは何かの廃墟化した大きな建物だった。既に十人以上の人達が集まっていて何かヒソヒソと話をしていた。


「女の子がこの中に入ったらしいんだけど、天井が落ちて瓦礫の下敷きになったらしいわよ」


「え~。その女の子もうダメじゃない?」


そこで夢は終わった。その後は良く覚えていない。だがその女の子が誰だったかは知っている。


「今日は夏蓮の四回目の命日か...」


夏蓮はあの後直ぐ病院に連れていかれたが意識不明の重体、医者から夏蓮が目を覚ます可能性は乏しく低いと言われ、また数年のうちに亡くなるとも言われた。

それからだ、優しかった父さんと母さんは毎日のように喧嘩をし、母さんは息子の俺に暴言、時には暴力もし始めたのは。


〈数年前〉


「夏蓮じゃなくて悟だったら良かったのに」


「お前!悟がそれを聞いたらどうするんだ!」


夜中、父さんと母さんの喧嘩をする声が聞こえて起きてしまった俺は、二人の部屋の扉の前で盗み聞きをしていた。そして母さんのあまりの言い様にショックを受けた。


「だいたいあなたが悪いのよ! どうしてちゃんと見ていなかったのよ!」


「それは...」


「それは?どうせ何も言えないんでしょ?情けない!」


それから母さんは数年間、毎日のように父さんを責めた。

俺は夏蓮の目が覚めれば前の母さんに戻ってくれると信じていた、が現実はそんなに甘くはなかったのだ。

それから俺は毎日夏蓮のお見舞いに行った。


「夏蓮、お兄ちゃんが来たよ。ほら夏蓮の好きな絵本を持ってきたんだ!お兄ちゃんが読んであげるからね」


それから数年後、夏蓮は息を引き取った。そして夏蓮を追う様に父さんは自殺したのであった。


俺は小学校をサボり夏蓮のお見舞いにばかり行っていたせいで周りからは()()休みをする最低な奴と言われ苛めに合ったりと学校には行けなくなってしまっていた。

それから人間不信となり高校入学もしたが学校には滅多に行ってはいなかった。


そして今に至る。


「昔の事を思いだしていたらもうこんな時間か、そろそろ行くか」


現在時刻は7時8分。俺は夏蓮に会う準備をし、数日ぶりに家から出た。

家から数分歩いたところで懐かしい少女が居た。そして少女がこちらに歩いて来るのが見えた。

その少女というのは昔俺が片思いしていた子だ。何年ぶりに見たであろうその子はとても美少女になっていた。そしてその少女の隣に少女と同じ学校の制服のようだが女性用の物ではなく男性用の物を着た人物が一緒に歩いていた。


「彼氏か...まぁそうだよな、あんな可愛いいんだから。俺の事なんか覚えてもないだろうな」


正直めちゃくちゃショックだった。あの時俺の歩む道が歪まなければあの子の隣にはあの男ではなく、俺が歩いていたかもしれないのだから。

そう考えていると少女はすれ違うところまで来ていた、そして。


「あれ?悟君だよね!久しぶり!私の事覚えてるかな?綾乃(あやの)だよ!」


「え?」


俺は豆鉄砲を食らった鳩のような顔になってしまっていた。まさか彼女が俺を覚えているとは思っていなかったからだ。そしてそんな俺の反応を見て、彼女は勘違いをしはじめた。


「え?覚えてくれてない...?」


「いや違う!」


俺は急いで誤解を解こうとするが、彼女の隣から声が入る。


「何が違うという言うんだい?君は綾乃ちゃんの何かな?」


彼女の隣にいる方を見るとそこにはとてつもないイケメンが立っていた。

そしてイケメン君の質問に答える。


「まず俺は綾乃の事を覚えている、そして俺は綾乃の元クラスメイトだ

よ」


俺の片思いの少女、その名前は河口綾乃(かわぐちあやの)。小学3年生~6年生までのクラスメイトだった。


「覚えてくれてたんだね!嬉しい!」


「ほー、元クラスメイトだったんだ、でもどうして呼び捨てなんだい?」


どうしてだろう?、だが気づいた時には綾乃と呼んでいたのだからどうしたもこうしたもない。というかさっきからこのイケメンはどうして喧嘩腰なんだ?あ、この二人は付き合っているのか?


「別に理由はないよ。」


「そうか。綾乃ちゃんはね僕の婚約者なんだ。呼び捨てはよしてくれないかな?」


婚約者か、そういえば綾乃の家は大金持ちだったっけ、そりゃあ婚約者くらいいるか。


「そうだったんだ、悪かった。もう会わないだろうけど呼び方は改めるよ」


「ダメ!」


横で突然大声を上げた綾乃は更に言葉を続ける。


「もう会わないとか言わないで!ていうか|光輝(こうき)とは結婚する気なんてこれっぽっちもないから!」


イケメン、もとい光輝の顔はショックという文字が浮かんでいた。


「いつも言ってるでしょ?貴方との婚約は勝手に親が進めただけで私は同意なんてしてないわよ!」


「うぅ、そ、それは...」


「それより悟君放課後予定とかない?色々お話がしたいの!」


俺も綾乃と色々話がしたい。だが今から行かなくてはならないところがあるのだ。


「ごめん、今から遠い所に行くんだ」


「そ、そっかぁ。あ!じゃあ携帯番号とライン教えて!」


「大丈夫だよ」


今から行くところでは電話もラインも出来ないので教えても意味はないが何故か断る事が出来なかった。


「じゃあ俺はそろそろ行かなくちゃならないから...」


「折角久しぶりに会えたのに...でも仕方ないね!」


「うん、会えて良かったよ。元気でね」





綾乃達と別れてから2時間が経った頃俺は森奥にある夏蓮の墓に着いていた。


「久しぶり、夏蓮」


俺は鞄からチューリップを取り出した。


「花好きだっただろ?お土産だよ」


夏蓮の墓横にチューリップを置いてから手を合わせて数十秒間拝んだ。


「よし、じゃあこれからお兄ちゃんもそっちに行くからね」


俺は用意してきたロープと折り畳み式の椅子を鞄から取り出し適当な場所を見つけて太い木の枝ににロープをくくりつけ輪を作った、そしてその下に折り畳み式の椅子置きその上に立ちロープで作った輪に首を通した。


「長い間決心がつかなかったんだ、ごめんね。でももう大丈夫だから。今からお兄ちゃんもそこに行くから」


数秒間目を瞑った俺は土台にしている椅子を蹴り飛ばしたのであった。


意外と苦しいな。それが最後にこの世界で思った俺の感想だった。

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