ライバル・【SPARK】
ちなみに【SPARK】は、男だらけの5人グループ。
イケメン揃いなので、女の子達の間では大人気。
ボーカルはカイ。見た目は17・18ぐらい。
いつも無表情で無口だけど、口を開くとまあ毒舌。
ギターはライカ。カイと同じ歳ぐらいに見える。
この人は明るくお調子者に見えて、結構目が笑っていないから怖い…。
ベースはハル。まだ15か16に見える。
何事にも関心の無さそうな顔をしている。
ドラムのウリュウ。この人は20を過ぎているって聞いたことがある。
しっかり者タイプで、面倒見が良いみたい。
そしてもう一人のギター、カザマ。19・20ぐらいで…。
…ちょっと困った人。いつでもハイテンションで、ヤク中だってウワサが…。
ちなみにウチのバンドは、
ボーカルがマイ、
ギターがオレ、
ベースはソウコ、
ドラムがネオンさん、
セイカはキーボードを担当している。
主に曲はソウコとセイカが、歌詞はマイが作っている。
わりと曲の種類にこだわらずに作っているので、覚えるオレは大変だ。
趣味で一人でギターをしていたら、ソウコに目を付けられてしまった…。
でもまあ、何とか楽しくやっている。
「さて、そろそろ時間だな」
オト姉が立ち上がったので、オレ達も各々準備に入る。
部屋を出る時に、円陣を組む
「一発目も大事だからな。気合を入れていこう!」
「おー!」
5人で掛け声と共に、手を合わせる。
うしっ!
気合は十分!…だったのに。
部屋を出た瞬間、よりにもよって【SPARK】とはち合わせ!
今日は厄日か!?
ビリビリッ バチバチッ
…わー、火花が可視できるよ。ありえねーよ。
「こんにちは、【Brightness】の皆さん」
最初に声を出したのは、【SPARK】のリーダー・ウリュウだ。
「こっコンニチハ」
ヘタな裏声ながらも、オト姉に隠れながら挨拶を返した。
ウリュウはニッコリ微笑む。
「今日は1番手だそうですね。頑張ってください。楽しみにしてますから」
う~ん。相変わらず礼儀正しい。
これでスーツなんて着たら、青年実業家だ。
爽やかさと甘いマスクで、女性ならノックアウトだろうな。
…まっ、普通の女の子なら、な。
オト姉の目がつり上がった。
「そう言えばそちらはメインみたいだな。ヘマするなよ?」
コーンッ!
あっ、試合開始のゴングが鳴った。
「フン。お前達の方こそ、ヘタな演奏するなよ」
カイが不愉快だという表情で言う。
「え~。あたし達がいつヘタな演奏したって言うんスか?」
舞が逆ギレオーラを出してきた。
「まあまあ。お互いに頑張れば良ーだろ? お客さんを喜ばすことが1番☆なんだしさ」
言葉とは裏腹に、ライカの目も笑っていない…。
「そうですわね。独りよがりの演奏って、醜いですものね」
セイカ、その笑顔が怖いっ!
「誰にだって、ミスはある」
ハルが無表情で、とんでもない爆弾を落とした。
「誰がミスをしたって…? 言ってみなよ」
ソウコがいつもからは想像も付かない、暗い声と表情を出した。
つーかみんなして、殺気出し過ぎ!
周囲にいる人が、ここ通れなくて困っているから!
殺気で固まっているから!
一人でアワアワしていると、ふと視線を感じて振り返った。
「わぁ!」
慌てて隣にいるソウコに抱きついた。
「カグラ!? どうしたの?」
「かっカザマさんが…」
オレの真後ろにいたのだ。
振り返った途端、顔がすぐ側にあって、ビックリした。
そのことに気付いたオト姉は、舌打ちした。
目の前のメンバーに気を取られて、背後に集中しなかった自分に腹が立ったんだろう。
「相っ変わらずカワイー反応だネ! カグラちゃん!」
相変わらず妙なテンションなカザマは、今までの雰囲気を壊すごとく、機嫌が良いみたいだ。
「どっどうも…」
ソウコがオレを隠すように、前に出てくれる。
「ウチのカグラに近付かないで。このヤク中」
のあっ!? ソウコさん、それは言ってはいけないこと!
「ああっ? 誰がジャンキーだって? お嬢ちゃん」
途端に不機嫌になる。
このテンションの激しさが、ヤク中だってウワサの元だってこと、本人は気付いていないみたいだ。
「すみません。カザマ、やめなさい」
ウリュウに止められ、カザマは舌打ちしながら向こうと合流した。
「すみません、カグラさん。カザマに悪気は無かったんです」
「いっいえ…。こちらこそ、ソウコが失礼なことを…」
そう言いながらも、ソウコの背後からは出ようとは思わない。
…顔を思いっきり至近距離で見られた。
すぐにバレるとは思わないけど…、うっかり街中で学生の姿で出会ったら、バレる可能性が無いとは言えない。
「本番前に失礼しました。それでは頑張ってくださいね」
ウリュウがそう言ったので、五人は歩いて行った。
5人の姿が見えなくなると、一気に空気が軽くなった。
「あ~! 腹立つ!」
オト姉が地面を蹴り付け、振り返った。
「カグラ! スマンな、大丈夫だったか?」
「うっうん」
こっそりソウコの背後から出た。
「本番前に、イヤッスねぇ」
「本当に。何しに来たんでしょう?」
「嫌味を言いに…でしょう?」
「まっ、何はともあれ、本番だ! もいっちょ気合入れていくぞ!」
「おうっ!」
―その後のライブは、いつも以上に気合が入っていたので、大成功を収めたのは言うまでもない。
そして【SPARK】のライブも素晴らしかったことも、言うまでも無かった。