逃げられない運命!?
「神楽、お前、恵まれているよな」
…そう言う友人の顔は、思いっきり暗い。
つーか怖い。
「なっ何がだよ?」
「女性関係がだよ!」
「…はぁ?」
「自覚無しかよ! ちくしょー!」
友人が泣き出すと、何故かクラスにいる男子生徒達をも泣き出す。
「えっ? ええっ!」
オレだけがアタフタ。
「バッキャロー! 地獄に落ちろぉ!」
「なっ何がだ! つーか何気にひどいセリフを残して出て行くなっ!」
教室を飛び出した友人だが…すぐに戻って来た。
襟首を捕まれ、青い顔で。
「あっ、オト姉」
「よぉ、神楽。迎えに来たぞ」
「うっ…」
オレまで血の気が下がる。
一つ年上で高校三年生の音遠さん。
でもオレ達は本当の姉弟ではない。家が隣同士の、幼馴染だ。
…しかもオト姉は実家が武道の家で、メチャクチャ強くて、凛々しい。
黙っていれば年上の美人のおねえさんなんだが…。
「ところでコイツ、お前の悪口を言ってなかったか?」
オト姉…顔が笑っていても、眼が笑っていない…。
「えっ?」
「『バカヤロウ、地獄に落ちろ』とか。よくも私の弟に言ってくれたものだな」
「ひぃいいっ! ゴメンなさい、スミマセン、ボクが全て悪いんです!」
ああ…。友人の顔色が青から白へ…。
オレはこれから起きるであろうことを防ぐ為に、カバンを持った。
「オト姉、行こうよ。迎えに来てくれたんだろ?」
「ふむ…」
オト姉はオレと友人をゆっくりと見比べた。
…ちなみに友人の足元は浮いている。
「…まっ、いっか」
そう言いつつも、友人を投げ捨てた。
がしゃがしゃーんっ!
…まっ、軽症だな。
「さっ、行こうか」
オト姉は優しく微笑み、オレの頬を撫でた。
「あぁ! 乗り遅れたッス!」
突如教室に入ってきたのは、隣のクラスの舞だ。
「あっ、オト先輩、こんちわっス」
「舞姫、相変わらず元気だな」
「はい♪ 今日は特に元気です」
満面の笑顔で、舞はこっちに歩いてくる。
明るく元気な舞は、いつも笑顔で癒やし系。オレのお弁当を毎日作ってくれる、ありがたい同級生だ。
「神楽くん、お待たせッス」
「いや、ちょうど良いよ。オト姉も今来たとこだし」
「そうだな。何なら全員拾って行くか?」
「あっ、西歌ちゃんはバイトしてから合流するそうです」
西歌は舞と同じクラスで、穏やかで社交的…だが毒舌家。
黙っていれば涼しげな雰囲気を持つ美少女なのに…。
舞だってそうかな?
見た目はとっても可愛い女の子。男女共に友人が多くて、女の子らしい…けど、何か執着深いというか嫉妬深いというか…。
「奏湖はどうした? 神楽」
「ソウは職員室。担任に呼び出されてる」
「また、か…。相変わらずみたいだな」
オト姉は呆れ顔でため息を吐き、舞は苦笑した。
奏湖はオレと同じクラス。
見た目無表情で無口、無愛想。だけど大陸の血を引いているせいか、顔立ちハッキリの美人さん。
でも…やっぱり性格は難アリだ。
「まっ、入りに遅れなければ良いか」
「遅れるワケないよ。ソウだもん」
「まっ、確かにな。じゃあ行くか、神楽、舞」
「うん」
「はい!」