鬼の爪なのだ
「さくら!つぎはどっちなのだ」
「あの角をみぎ」
「わかったのだ」
そう返事して葉月は左に曲がろうとする。
「葉月、そっちちがう。こっち」
「わかってるのだ。ちょっと遠回りしたかっただけなのだ」
「はいはい分かりました。もうちょっといったらかすみたちがいるはずだよ」
「うん」
葉月はさくらをナビ代わりに使っていた。
自分で妖気を追えることはできるが、面倒なのでさくらにナビを任せている。
しばらく走ると、かすみたちが魔物と戦っているのが見えた。
「おねえちゃん!」
かすみが振り返ると、色は分からないが顔が血に染まっているように見えた。
それを見た途端、葉月に異変が訪れた。
「うわあああああ」
叫び声をあげる葉月の額が盛り上がり角が生えてきた。
葉月の横ではさくらが『はづきしっかりして』と叫んでいる。
「は、はづき?」
魔物との戦闘をこなしながら、かすみは葉月が心配でたまらない。
いったい何が起こったの?葉月は大丈夫なの?
そんなことを思いながらも戦闘は続いた。
そして、葉月の叫び声がやんだ。
それと同時に黒い影が魔物に襲い掛かった。
葉月だった。
葉月の目は真紅に怪しく光り、つめも鋭くとがっていた。
それを見てそこにいた誰もが思った『鬼』だと。
葉月は魔物の急所など関係なく、めちゃくちゃに魔物をその爪で切り刻んでいた。
しかし、それでは魔物にダメージと呼ばれるものは与えられない。
それでも葉月は攻撃をやめない。
「はづき・・・」
かすみは心配そうに戦闘を見つめる。
出来ることなら自分も戦闘に参加し葉月の手助けをしたい。
だが、それはできない。
その行為はただ、葉月の足を引っ張るだけだから。
歯噛みするかすみの前に一人の男が現れた。
「とうとうこの日が来たか。出来れば来てほしくなかったが」
「あなたは?」
「ああ、お前たち一族を見守ってきたものだ。別に警戒する必要はない」
そう言うと男は、オーラを纏い始めた。
すると男から葉月と同じように額から角が2本生え始めた。
男は魔物に突っ込むと、一刀のもとに魔物を退治した。
葉月は今度は男に刃を向けた。
しばらく男は葉月の攻撃を捌いていた。
「まずいな。これほどとは思わなかった。しかし、まだ甘い!かすみ!手を貸せ」
かすみたち巫女と男でなんとか葉月を取り押さえた。
それと同時に葉月は気を失った。
「ここはどこなのだ・・・」
「あっ、葉月がおきた」