見回りなのだ
「恵、恵理、恵樹、そっちは異常ない?」
『こっちは異常なし』
『こっちも今のところ以上ありません』
『だいじょうぶで~す』
かすみとメイド3姉妹は、4人一組で東西南北見回っていた。
いつもは通報があってから討伐に出かけていたが、近頃は魔物が出る頻度が高くなっていた。
それに比例するように強さも増していた。
葉月はというと街の真ん中でいつでも駆けつける態勢でいた。
どこに現れてもいち早く駆け付けられるように。
「さくら、ひまなのだ」
「仕方がないじゃない。かすみちゃんにここで待つように言われたんだから」
さくらは、妖精の王に遅くまで出かけ過ぎだと怒られ、三神家に家出?してきている。
葉月に『もういい加減帰るのだ』と言われたときは、いきなり殴りかかり葉月にわしづかみにされていた。
さくらとしては、おいしいご飯も食べられるし別に帰らなくてもいいかなと思っている。
「それにしても暇すぎなのだ。暇すぎてお腹が減ったので弁当を食べるしかないのだ」
葉月は恵に頼んで弁当を作ってもらっていた。
さくらは、なんというめちゃくちゃな口実と思いながらも何も言わない。
自分も食べたいから。
「ねえ、あたしの分は?」
「そんなのないのだ」
葉月は素早く風呂敷を広げ自分の分を取り出した。
「ねえ、まだ風呂敷膨らんでるけど、何が入ってるの?」
さくらがジト目で葉月の目を見る。
「え~と、そ、そうなのだ。あれが入ってるのだ」
「あれって?」
「あれはあれなのだ。さくらには関係ないのだ」
下手な言い訳をする葉月を見て、桜は確信した。
あの中には自分の弁当があると。
そして羽を広げて風呂敷の元までさくらは飛んでいこうとする。
「なにをする気なのだ」
「ちょっとその中見るだけ」
「だめなのだ。これを開けると爆発するのだ」
「いいから見せなさいよ~」
「ダメなのだ~」
弁当を独り占めしたい葉月と、自分の弁当を取り返したいさくらのあいだで諍いが始まった。
そんなことをしていると、南にいるかすみからの念話が届いた。
『葉月、聞こえる?こっちに魔物が出たの。応援に来て頂戴』
『・・・・』
『葉月、どうしたの。きこえないの。葉月返事をして頂戴』
『もぐもぐ、だいじょうぶなのだ。いますぐいくのだ』
「お姉ちゃんから連絡が来たのだ。今すぐ行くのだ」
「あたしのべんとう・・・」
さくらの分は二人が暴れたせいでひっくり返り道に散らばっている。
「そんなのはいいのだ。早くいかないといけないのだ」
さくらは散らばった弁当を、恨めしそうに見つめていた。
「わかったのだ。帰ったらおいしいものを作ってもらうのだ」
「ほんとに?」
「ほんとなのだ。あたしは嘘はつかない女なのだ」
ふふふ。
これであたしも帰ったら美味しいものを食べられるのだ。