桜の木の妖精なのだ
目を開けると私をのぞき込む人間がいた。
「お姉ちゃ~ん。このチビ助起きたのだ~」
「こら~!誰がチビ助だだれが」
やはり私のことを言ったのだろう、思わず反応してしまった。
「あんた、あたしを誰だと思ってんの・・・」
あれ、あたしっていったい何者?
それに、ここはいったいどこなのよ~!
「知らないのだ。ただの弁当泥棒ではないのか?」
「ちが~う。あたしは妖精」
そうだあたしは桜の木の妖精。
「妖怪ではないのか?」
「ちが~う。ぜんぜんち・が・う」
「そうか。まあいいのだ。起きたならさっさと帰るがいいのだ」
むかっ
なんだこいつ。
えらそうに。
それにしてもなんであたしはここに寝てた。
う~ん・・・
そこへかすみが現れた。
「おきたのね。それで体はなんともない?」
じ~っ
「な、なに?」
なんか酷い事こいつにされた気がする。
ダメだ思い出せん。
それにしても・・・おなかすいたよ~。
「ねえ。ねえっば」
「なあに」
「おなかすいた」
「わかったわ。今すぐ持ってきてあげる」
「お姉ちゃん。あたしもお腹減ったのだ」
かすみはちらっと葉月の顔を見て言った。
「あっそう。でもお弁当あれだけ食べたからダメ」
「え~」
そして、しばらくするとかすみは料理を持ってきた。
すると、妖精はかすみの顔と料理を交互に見ている。
「ひっ!思い出した。あんた、あたしを殺そうとした女だ。いったい何の恨みがあってあんなことしたのよ」
「アッ思い出したんだ。ごめんなさいね。成り行きでああなっちゃったのよ」
「ごめんで済むか~!死にそうだったんだぞ」
「おいしいもの食べさせてあげるから、ゆるしてちょうだい。ね」
「おいしいもの・・・」
その時料理の香りが要請に届いた。
!!いいにおい!!
「わかった。ゆるしてあげる。だから、おいしいもの食べさせてよね」
「はいはい」
妖精は4~5歳の子供の体から、手のひらに乗る程度の大きさになっていた。
妖精はかすみが作ってきた料理を堪能している。
それを葉月は指をくわえて見つめる。
しばらくすると、妖精はお代わりを要求してきた。
「うん、おいしい。あんたお料理じょうずだね」
「そうかな、ありがとね」
しばらくすると、またお代わりを要求してきた。
「だいじょうぶなの。そんなにお腹膨らませて」
「らいじょぶらいじょぶ。こんなごちそう今度いつ食べられるかわからないからね」
妖精のお腹は今にも破裂しそうなのを見てかすみは提案した。
「また今度来た時に作ってあげるから、今日はここまでにしなさい」
「えっ、また来てもいいの?」
「いいわよ」
「わかった。またこんどにする」
それからというもの妖精は、毎日のように三神家に通っている。
「きょうもきたよ~」
「おっ、今日も来たのか。図々しいチビ助だな」
「チビ助言うな~!!あたしには『さくら』という名前があるの!」
妖精はかすみに名前まで付けてもらっていた。