詰めが甘いのだ
感想をいただきました。とてもうれしかったです。
かすみは頭を抱えていた。
「え~と、これがみんなへのお給金。そしてその他諸々。一番痛いのがこの間の魔物退治にかかった必要のない石畳の修繕費用。これが痛すぎる。痛すぎるよ~。なんで私がこんなことしないといけないの・・・・
まあ、愚痴を言ってもしかたがないか。私は巫女たちの首領でありこの三神家の当主なんだから。そうだ、へこたれるなかすみ。がんばれ」
頭の痛い子のように自分自身を励ますかすみであった。
首領に当主。
これは以前は、母親が巫女たちのまとめ役である首領をしていた。
当主の方は父親が。
しかし三年前に魔物討伐の際に二人とも帰らぬ人となっていた。
どうして死んじゃったの、父上母上。
こういつも思うが、声には出さない。
かすみは思いを飲み込む。
この光景は葉月が討伐に加わった月には必ずみられた。
「今月もおじさんにあまえさせてもらうしかないか」
それを遠目に隠れて眺めるものがいた。
葉月である。
あ~あ、またあんなに頭抱えてる。
家ってそんなに貧乏なのかな?
葉月はなぜかすみが頭を抱えてるのか、その理由を知らない。
知らないというか考えようとしない。
なぜか本能が考えることを拒絶しているのだ。
自分のせいだと認めるのが嫌なのだろう。
「なにをなさっているのですか葉月様」
「うをっ、びっくりした~めぐみんか」
「めぐみんではありません。恵です」
三神 恵。
この家でメイドをしている三人のうちの一人であり、かすみや葉月のいとこである。
恵は二人の親が亡くなってからお世話をするために、分家からやってきていた。
二人にとっては姉のような存在である。
恵は葉月の視線の先を見てそういうことかと気が付く。
またあんなに頭を抱えて、早くお茶でも持っていってあげないと。
そのまえに、まずはこの子ね。
葉月は何か感づいたのか、その場から逃げようとしていた。
「なにをこそっと逃げようとしているのですか」
「えっ」
一瞬言葉に詰まるが、葉月なりの言い訳を頭をフル回転させて考えた。
「え~と、そうなのだ。おしっこなのだ」
フル回転させたがこの程度であった。
恵は懐から十手を取り出すと手元の紐をほどき、あっという間に葉月をふんじばったのである。
「なにをするのだめぐみん。ひもをほどくのだ。おしっこ漏れちゃうのだ」
「我慢してください」
「なっ!ほんとにおしっこしたいのだ。うそじゃないのだ」
葉月は本当におしっこがしたくなっていた。
おしっこという嘘をついたら本当にしたくなっていた。
「今日という今日は、なぜかすみ様が困っているか教えてあげます」
これはやばい、やばすぎる気がする。
そう葉月の野生の勘が訴えていた。
すると、葉月は恵の目をウルウルとした目で見つめてくる。
「そんな目で見つめてもダメです」
しかし、葉月は見つめてきた。
「わかりました。おしっこいっていいですよ。わたしもいきますけど」
「うん、わかったのだ」
葉月は用を足すためにトイレへとやってきた。
そして紐をほどいてもらった。
「ありがとうなのだ。では、おしっこにいってくるのだ」
「そんな宣言いりませんから、早く済ませてきてください」
「わかったのだ」
そう言って葉月はトイレの中へ入っていった。
「ひめさま~まだですか?」
「まだ、パンツも脱いでないのだ」
「そうですか」
せかし過ぎても悪いかと思い、恵は5秒ほど間を置いた。
「ひめさま~まだですか?」
・・・・・
恵は一瞬にしてやられたと気付いた。
トイレの扉を開けると葉月はどこにもいなかった。
トイレの小窓から脱出したのであった。
あ~、また姫様にしてやられた。
してやられたではない。
ただ、実の姉のかすみと従妹のめぐみんは、葉月に甘すぎるのである。
ふふ、めぐみんは詰めが甘いのだ。
登場人物などは細かく決めてませんので、いつの間にかいなくなったりするかもしれません。( ´艸`)